東洋のモナ・リザへ会いに。
長い間、その存在を忘れ去られ、ジャングルの中で朽ちかけていたアンコール・ワットですが、世界各国の協力のもと復興と保護が行われ、その荘厳さを取り戻しています。そのジャングルで深い眠りについていたアンコール・ワットの様子を今に伝えるのが、ベンメリアという寺院です。その歴史はアンコール・ワットよりも、さらにさかのぼります。アンコール・ワットからさらに東へ40kmほど奥地に、その遺跡はあります。最近まで内戦時の地雷が残っていたため、一般の人間は、ベンメリアに近づくことができませんでした。
ようやく地雷の処理も終わり、ツーリストも安心して訪れることができるようになったのです。まさに平和の象徴とも言える寺院でしょう。
1914年に発見されたばかりのバンテアイ・スレイですが、一躍その存在を有名にしたのは、テヴァターと呼ばれる女神たちの像です。体を緩やかに右に開き、顔を微かに傾け、神秘的な笑みをたたえたその容姿は、見る者をひきつけてやみません。この姿、どこかで見たような気が……。そう、あのレオナルド・ダ・ヴィンチのモナ・リザに似ていませんか? 当時、カンボジアを統治していたフランスの人々は、ジャングルの奥地で、この女神を発見してその美しさに驚きました。そして、祖国のルーヴル美術館に所蔵されているモナ・リザと、その姿を重ねて「東洋のモナ・リザ」と呼んだのです。
写真/ 文 美濃部 孝