ダンスは僕にとって言葉みたいなもの

――ダンスの魅力はなんでしょうか?
トモヒロ なんで僕がダンスにひかれたかと、自分の根っこにあるものを分析すると、たぶんダンスは僕にとって言葉みたいなものなんですよ。僕ね、生まれつき耳が不自由なんです。人とコミュニケーションを取るのに苦手意識があって、孤独感みたいなものをすごく感じていました。どこかで不自由さを抱えていました。ダンスを得たことで、自分が自由になって、世界が広がった。自由になれるんですね、踊っているときは。ダンス、っていう表現方法が下りてきたんです。自分の言葉がそこで生まれた。それがダンスを続けてきた理由だと思うんです。ダンスは、自分の表現手段であり、ダンスをしているときは、自分とつながれて、安心感を得られるんです。自分を認められるというか、自分を肯定できる。いまから振り返ると、それはヨガなんですよね。

――ヨガインストラクターの前にダンスを教えてたりはしてたんですか?
トモヒロ 教えてなかったです。僕が教え始めたのは、ヨガからです。ダンスを教え始めたのはごく最近です。ヨガとダンスの違いとか特徴の話にもなるんですけど、ヨガは教えてそれなりに経験を積んできました。身体の動き、というものに僕はけっこう興味があって。身体の機能ということを考えていくと、動きが人間の身体にとって大事で。ヨガは割と止まっているので、止まっているなかでも内的な動きは存在するんだけれども、ダンスは別の側面があって、身体の機能を高めるという意味では、動かすのがいいんですよ。そういう意味で、ダンスを新たに別の視点で自分のなかで見直すきっかけがありました。ダンスを通じて、人が楽しんで意識をあげていくレッスンができないかな、と思って、最近ダンスを教えています。

――ダンス以外にも、フランクリンメソッドも教えていますね。
トモヒロ 僕の活動は今、ヨガとダンスとフランクリンメソッドの3つが大体基本になっています。身体を通じてその人の意識を高めるというか、変えていくというのが僕のメッセージなんです。フランクリンメソッドは、人間の身体の機能とかデザインを踏まえて、身体を上手に使っていきましょう、というトレーニングです。歩くときに、身体はどんな動きをする、とか、解剖学的に学んで、それを実際に身体に身につけていきます。僕はそのトレーニングを受けて教える資格を持っているので、定期的にワークショップで教えているんです。

――現代人はことばに頼りすぎていて、身体感覚がうすいかもしれませんね。
トモヒロ それはあるかもしれませんね。マインドが優位というのはあるかもしれません。だからこれだけ、ヨガとか、瞑想とか、けっこう注目を集めているんだと思います。人が自分自身の意識を高めていくのに、ヨガはとてもいいトレーニング法だと思います。僕が教えるダンスとかフランクリンメソッドでも、意識を高めていくという点で同じ役割を果せると思っています。身体を知って、身体を感じることで自分とつながる、するとその人の本質が輝く。その人の意識というのが、高まって、モノの見方が変わってくる。そうすると、その人がだんだん自由になってくる。人生が楽しく、豊かになっていく。僕がそういう体験をしてきたので、それを伝えたい、というか、その手伝いをしたいというか、それが僕の基本的なスタンスですね。

後編へつづく

写真・文 Art of living magazine 編集部