見島では、その家で初めて男の子が誕生すると年末に親戚や知人などが集まり、大きな凧を作り、お正月に将来の無事と成長を願ってそれを揚げる風習があります。
その大きな凧のことを、「鬼ヨウズ」といいます。
鬼ヨウズは、高く揚がれば揚がるほど、縁起が良いとされています。

友だちの家で作られた鬼ヨウズは、畳八畳分の大きさで天井に飾られています。
その凧を揚げるのですから、結構すごいです。

「鬼ヨウズを揚げる時に、風を呼ぶ唄」(風が凪の時)
山んぼう、山んぼう、風ぉ一口やらんか、
やらにゃーやるな 味噌も醤油もやりゃせん
(山んぼうは山姥が語源)

鬼の目に下がっているフサは、涙と言われています。
強さと情けを兼ね備えた人となるよう願いも込められているそうです。
人はただ強いだけでは十分ではないということなのでしょうか。

「鬼の目にも涙」とは冷酷で無慈悲な人間でも、時には同情や憐れみを感じて涙を流すという意味なので、涙は情深さを意味するんですね。

鬼ヨウズは、大陸から渡ってきたと言われています。 
安政五年(1858年)に書かれた「乾島略誌」によれば、鬼ヨウズは鬼妖図の字があてられ記されていて、「予、これ村老より聞く、先年イクラゲ山に落ち、その製は我がところのものではない。土人は之は萩の役所に届け、初めて朝鮮製であることを知った。」とあるそうです。

色彩はすべて青色の濃淡に描かれていて青鬼の形相で、後世、島の人によって赤、青、黒の三色を使う様になり、耳飾り、ヘコ(尾)、涙飾りも、後の装飾であると言われています。

日韓ワールドカップ(2002年)の時に韓国から飛ばした赤い風船が九州の方まで飛んで来たという話を聞いたことがあります。風の流れで大凧が大陸から届いたのかも知れません。
見島は意外と韓国に近いので、大凧が飛んで来たといっても納得出来るような気がします。

北前船での文化の交流がありつつ、大陸とも近いという見島。
日露戦争での日本海海戦のバルチック艦隊の時もロシア兵が漂着したと言われています。

もうすぐお正月ですね。一年本当にあっという間に感じます。
見島では、一月二日に漁師さんが、一年の航海安全と大漁を祈り船の上から、みかんを配ります。
そして、本村の住吉神社では漁師さん達が集まり、初講が行われます。
住吉神社は本村漁民の氏神であり、守護神です。

大漁旗が取り付けられています。

ちなみに、萩と見島を結ぶ高速船も「おにようず」と言います。

写真&文 野頭尚子