時代とともに呼吸する
第十八夜
わたしは準備万端です
用意ドンで走れます
わたしにできることはなにか
わたしにしかできないことはなにか
あなたの合図を待っています
山が泳げるほどの雨が降り
わたしはひとりで立っていました
淋 淋 淋 と泣きました
これが合図ですか
今朝
空が踊れるほどの風が吹き
わたしはひとりでしゃがんでいました
雲 雲 雲 と占いました
こっちが合図ですか
明日、ピカピカの最新式が出るそうです
あさって、旧式に高値がつくそうです
しあさって、世界が変わるそうです
そっちが合図ですか
出来事を送りつけてくるなら
わたしにだって考えがありますよ
いいですか
あなたを深く吸いこんで
そのとき、わたしに迫ってきたものを
わたしが“よきもの”と感じたものを
あなたからの合図だ
っていうことにしてしまいますからね
もうわたしは走り出してしまいますからね
いくらあなたが「時代」だからって
吸いっぱなしにはできません
あなたのほうこそわたしを吸ってください
いいですか
位置についています
用意できています
いきますよ
ドン!
今夜のキーワードは「時代とともに呼吸する」でした。このキーワードを書くときに思い出したのは、2011年に取材で出会った人たちのことでした。
「やっぱりあきらめたくない」と転職したメンバーさんがいました。「今だよ」と言われている気がする、と南の島に移住したインストラクターさんがいました。「舞台に帰る」と言って女優の仕事を増やしたスタッフさんがいました。「もう無駄なものを体に入れたくない」と食事をガラッと変えたスタッフさんがいました。
みんな、ほんとうに、きれいだった。
本音を聴きとっていく姿を、人によっては「かっこいい」と言ったり「輝いている」と言ったりするでしょう。「やばい」と言ったり「オーラがある」と言ったりするかもしれません。
自分ひとりで生きているつもりでも、同じ時代の空気を吸って、同じ大きな出来事をそれぞれの角度で経験して、何かしら反応しながら、何かしら交換しながら生きている。時代とともに呼吸していない人なんて、いないんじゃないかと思います。
私自身も、第十四夜で書いたように2011年以降ヨガのクラスを減らし、書くことに軸足を移していきました。きれいだなと思った人たちの姿に憧れて。
さて、今、この時代とともに呼吸しながら聴きとっている音は、どんな音でしょうか。ぜひみなさんの本音も聴かせてください。おたよりはいつでもお待ちしています。
古金谷あゆみ がガイドをつとめる「書く瞑想」クラス情報
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イラスト 内田 松里/文 古金谷 あゆみ