毎年この時期になると、食いしん坊の友人たちがそわそわしはじめる。初夏の一大イベントである梅仕事を控えているせいもあるが、もうひとつ、「ルバーブが出回った!」「まだ見てない~」と嬉しそうに言い合っているのだ。ルバーブとはハーブの一種で、食べるのは、かたくて長い茎の部分。果物のようにジャムやコンポート、パイやクランブルにするのがポピュラーらしい。酸味が強いことから好みは分かれるが、好きな人にとっては、なにしろクセになる味なのだという。

と知ったかぶってはみたものの、ルバーブを食べたこともなければ見たこともナイ。お料理一年生のわたしにとっては、果てしなく遠い食材のひとつだったが、つい先日、近所の朝市でルバーブなるものを発見。農家のおばちゃんの「とにかく酸っぱいから、酸味を熱で飛ばして、甘味を加減するイメージね」という、わかったようなわらからないような助言とともに2束をもちかえり、ジャムにしてみた。

レシピは農家のおばちゃん流。刻んだルバーブに、きび砂糖(ルバーブの重さの15%)をまぶしてしばらく置き、砂糖が溶けてルバーブの水分が出てきたところで強火にかける。「すぐに溶けるから、つきっきりでね」と聞いてはいたが、ゴロゴロとした茎たちを適当にかき混ぜていたら、本当にたちどころにとろりとなった。ルバーブのジャムってば、こんなに簡単にできるのか。 

ちなみに砂糖の量は、好みでOK。今回教わった15%というのはジャムにしてはずいぶんと少な目だが、ルバーブの酸味を味わうにはこのくらいがおすすめとのこと。砂糖が少ないほど保存性は低くなるが、すぐに食べ切るのなら問題はないらしい。

肝心の味はというと、まろやかな酸味があってどこか土っぽい香り。口当たりは杏やプルーンに近く、豆乳と少量の水とミキサーにかけて飲んだら、たいそう美味しかった。この味ならジュース用のシロップもほしいし、焼き菓子も食べてみたい! と食い意地が炸裂するも、時期が早いのか近くの食品店ではまったく見かけない。

何でもシベリア原産のルバーブは冷涼な気候を好むため、主に長野と北海道で栽培されているらしい。ちょうど家族で長野にいく用があったので、地域の農作物を売る直売所で真っ赤なルバーブを購入。ルバーブが自生しているという噂を頼りに、里山をうろつきルバーブ探しにもいそしんだ。

それらしき植物を見つけて茎をかじってみたら、明らかに違うような気もするし、ひょっとしてルバーブかも……という気がしないでもない。自分の舌にまったく自信がないもので、横にいた夫に「なあルバーブやんな? ちゃうかな? ルバーブやんな?」と繰り返し聞いていたら、「おれ、ルバーブ知らんし!」とまっとうな一撃をくらう。

そうこうしていたらルバーブ好きの友から、「長野の友人の畑にルバーブがあるよ」との情報が舞い込み、厚かましくも見せてもらうことに。そこのうちのルバーブは、何とも野趣あふれるルックスで、背丈が高く、大きな葉はところどころ虫に食われている。花や種をつけているものもあり、茎の色は緑一色。

自分の中のルバーブ像と違ったため、思わず「ルバーブはどこですか?」とルバーブの前で聞いてしまったが、単に、いろいろな種類があるというだけの話だった。また、直売所の人によると、赤いルバーブのような見た目の鮮やかさには欠けるものの、特有の酸味は緑色のルバーブのほうが強いらしい。

自生ルバーブの話にいたっては、「ないでしょ、このあたりでは見たことないよ~(軽く失笑)」と畑の主。だとしたら、道端でかじったアレは何だったのだろう(毒がなくてよかった!)。ともあれ、すっかり魅了されてしまったルバーブ、来年はじぶんの畑で育ててみたい。

写真&文 松田 可奈