教えるとか学ぶって、愛情と一緒なんじゃないかな

──ダンスを引退して本格的にヨガを教えるようになってからは、どんな勉強を?

ヨガを教えていると、学ぶことがたくさんあります。毎回が勉強です。私がオーケストラの指揮者のようにうまくみんなを巻き込むことができると、みんなで一緒に音楽を奏でてつながっているようなエネルギーの高まりが感じられますが、変に頭で考え過ぎるとコケてしまったり(笑)。毎回がダンスの舞台の幕開けのような感じです。

あとは、3年ぐらい前からパワー・アドベンチャーという団体が主催するキャンプでヨガと瞑想を担当しています。このキャンプでは大自然のなかで寝食を共にし、ヨガや瞑想、ロッククライミングという体験を通じてそれぞれの可能性を伸ばしていきます。

意外に思われるかもしれませんが、ロッククライミングとヨガには、今この瞬間に意識を向けるという集中のしかたや恐怖心の克服など共通点がたくさんあるんですよ。参加者のみなさんが周りの支えによって自分の限界を超えていく姿や、初対面の人同士とは思えない素晴らしいチームワークのドラマに、毎回感動してしまいます。

──トモコ先生にとって「学び」とは?

まず肉体を通して感じて、後から頭で考える。自分が何かすごい体験をして、そこから学んだことをヨガのクラスのテーマとして生徒さんとシェアしたりもします。自分がもっといろんなことから吸収して学ぼうという意識をもてば、それが結果として失敗に終わったことだとしても、経験を積めば積むほど肥やしになっていくというか。そして、もしそれが人のためになるのなら誰かに伝えたいと思いますよね。

いつだったか「人は誰でもいつかは先生になる」という言葉を聞いたことがあります。先生というのは職業のことではなく、自分が経験したことを人に伝えたくなるのは自然なことだという意味だと思います。教えるというよりも、もう持ち切れないぐらい受け取った何かを人にあげようと思って手渡している感じかもしれませんね。だから、愛情と一緒なんじゃないかな。人に愛されれば愛されるほど、それを誰かにあげたくなる。愛したくなる。

そういう意味で、「学び」は私にとって生きていくうえでの活力です。たとえば、コーヒーが大好きな人にコーヒーのことを質問したら、目をキラキラさせて詳しく語ってくれますよね。何かに情熱や愛情を注いでいる人たちと一緒に過ごすと、その“大好き”を受け取ってたくさんのことが学べます。何かを学ぶとその喜びを誰かにシェアしたくなって、喜んでもらうともっと学びたくなって……その繰り返しが私の生きがいになっています。

前編はこちら。

取材・文 古金谷 あゆみ このインタビューは、「スタジオ・ヨギーのある生活」 vol.24(2013年1月号)に掲載されたものです。