今注目しているのは筋膜

──好きな筋肉や骨ってありますか?

今興味があるのが、筋膜です。筋膜っていうのは、医学的にはただ筋肉を包んでいるだけのもの、というふうに思われていたのが、実は重要だった、というのが最近わかってきたんです。某テレビ番組では、筋膜は医学界のシンデレラとも言われていました。

もともと僕が筋膜に興味を持ったのは、kyo先生のおかげですね。kyo先生はすごいです、先取りしていますからね。筋膜のほかにも、仙腸関節もそうです。あの関節も、謎なんです。ある研究で、仙腸関節に塩分濃度の濃い液体を注入する検証をしたんです。痛みをわざとつくり出すのですが、骨盤周囲が痛くなるかなというのはなんとなくわかります。でもそれが、足先のほうまで痛くなるときもある。どうしてなのか原因はわかっていません。そんなことをいろいろ研究している段階です。

学生が長く、社会人になったのは、30歳を過ぎてから

──学生時代が長かったそうですね?

僕は、一浪して、一留して5年間大学へ行って、そのあと大学院へ2年間行って、修士号を取りました。さらに、理学療法士の養成校に一回落ちて。その次の年に理学療法士の夜間部の養成校に受かりました。そこから4年間、日中はトレーナーのへ派遣会社で働き、夜は学校という日々が続きました。そのトレーナー派遣会社の中村千秋社長(現早稲田大学スポーツ科学学術院准教授)が、僕をkyo先生に紹介してくださったんです。僕がちょうど理学療法士の免許をとったところでした。だから僕、きちっと社会人になって働きはじめたのが31とか32です。学生をずーっとしていました。そして、懲りずにまた大学院へ行っています。学生時代が長かった、いや進行形で長いんです。

──この仕事(解剖学講師)をしていてよかったな、と思うときはどんなときですか?

元々人に教えるのがたぶん好きなんですね。学校の先生になりたいなーと思っているときも一時ありました。トレーナーの語源のトレインには、教育するという意味もあるんです。スポーツ選手のトレーナーとしてが始まりでしたが、今は、解剖学の講師とか、大学の講師として教える立場になって、今僕が持っているさまざまな最新の知見や適切な情報を、みなさんにお伝えできること、みなさんがそれを理解して、「よかった」、「改善した」、「こう考えればいいんだ」、と思ってもらえたときが、うれしいです。

僕は解剖学の講師で解剖学を教えているんですけど、実際には何を教えているかっていうと、自分で考える力を教えようって思っているんです。もちろん僕自身にも足りない部分で、自分で育てなくちゃいけないな、って思っています。スタジオに来て、ヨガ受けて、すっきりして帰る、でも良いんですけど、ヨギーさんってライフスタイルを提供したり、自分自身を高めようとするところを大切にしていると思うので。

受け身の姿勢から目を輝かせて倒れんばかりに前ノメリになって、講義を聞く、質問する、自分で考えるといった人間的な変化が見られたときに、解剖学講師という講師業をしていて、すごくうれしい。これやったらこういうふうによくなったんですよ、よくならなかったんですが、どうですか?と質問できるようになったら、すごいなーと思ったりします。2015年から担当している「カラダ塾」のネーミングは、すごくよかったと思っています。これが「セミナー」だったら、違っていたと思う。ヨギーと目指しているところは同じかなと思います。あくまでアナトミー(解剖学)を通して、自己実現とかを手助けする、というところが僕の役割だと思うし、それができているときがやはり一番うれしい瞬間だと思います。

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写真・文 七戸 綾子