学校の体育やマラソン大会が大嫌いだった人が大人になって、さすがになにも運動しないと健康にも体型的にもまずいかも?と、なにかしら体を動かし始めるようになります。ヨガもそんな動機で始める方も多いです。私自身、以前、ボクササイズという名のほとんどボクシング(!)をやっていたことがあるのですが、シャドー(鏡に自分の姿を映しながらワン・ツーと打ち込み)、サンドバッグ、パンチングボール、ロープ(縄跳び)あたりでぜいぜいし、ラストのバイク(固定された自転車)を漕ぐあたりには、耳たぶにつけてた心拍数計測器がアラートの数値を跳ね上げ、いっさいの負荷がなくなったバイクを漕ぐはめになるのでした。

運動不足だから? 子どもの頃、マラソンが苦手だったから? 鍛えたら変わる? それとも、子どもの頃鍛えていない心肺機能は、大人になって鍛えても無駄なの?と思いました。大人になっても体はどこまで鍛えることが可能なのか。素朴な疑問を、スポーツトレーナーでもある、解剖学講師の中井先生に聞いてみました。

小さい頃マラソンが苦手で、30歳過ぎてから走りはじめても、体は変わりますか?

「30歳を過ぎてくると体力の衰えを感じ始めますよね。今まであまり運動してこなかった人が運動を始めようかなと思う時期かもしれません。マラソンまではいかなくとも長い距離を走る運動は、有酸素運動と言って、酸素を使い脂肪を燃焼させる運動で、ダイエットに効果があると良くメディアでも取り上げられると思います。

ある研究では、40~50歳から運動を始めても20代で運動するとの同じくらい有酸素能力が向上すると言われていますので、30歳代からでも十分に有酸素能力の向上が期待できます。また、走るのが苦手な人は、筋力トレーニングから始めても良いかもしれません。こちらは90歳のご高齢の方でも筋力の向上をすることが分かっております。」
とのこと。大人になってからも筋肉を鍛え、有酸素能力をあげることができるんですね。希望が持てます。

体がかたいのですが、ヨガを続けると、やわらかくなっていきますか?

「身体が“かたい”には、種類があります。大きく分けると次の3つです。
1. 骨と骨の連結部分である関節が動かない
2. 筋・筋膜の柔軟性の欠如 
3. カラダの使い方、運動手順(制御)が狂ってしまっている

1つ目の骨の周囲がくっついてしまっている状態は、ヨガでは改善はしません。ドアの蝶番がさびて動かないようなイメージです。先天的なものもありますが、後天的にケガや関節の病気などで、骨の末端と末端が癒着してしまって完全に関節の動きを制限してしまいます。

2つ目の筋・筋膜の柔軟性については、ストレッチやマッサージ、もちろんヨガなどで改善が見られますし、筋膜にアプローチするビューティ・ペルヴィスでも改善をすることができると思います。

3つ目の身体の使い方については、特に体幹(コアとも言ったりしますが)の安定性がキーとなっていて、ピラティスやヨガの動きのなかで適切な体幹の安定性を習得すると即時的に改善することがあります。」

運動が苦手で大人になっても、体を動かし、筋肉を鍛えていけば、走るのも夢じゃないんですね! 体はいくつになっても応えてくれるというのがわかって希望が持てました。

取材・文 七戸 綾子