「競争ではない」と教わるのですが、誰かに追いつこうとがんばるのもいけないのでしょうか?
先生、質問です! vol.45
Question
よく「競争ではない」と教わるのですが、つい人と比べてしまいます。誰かに追いつこうとがんばるのもいけないのでしょうか?
BEAUTY PELVISプログラムディレクター/b-i STYLE代表 kyo先生
保育士になるための実習を心身障害者施設で行い、さまざまな人と出会いました。健常者として生まれてきた自分の使命を考えるようになり、このときの体験から個性を重視するビューティ・ペルヴィスのプログラムが生まれました。
最初の一歩を踏み出すパワーに!
ビューティ・ペルヴィスのクラスでは、自分自身の調整を通して心身に対する意識や感度を高めていくことが目標ですので、よく「競争ではないですよ」とお話ししています。
人と比べるのは自分を知ろうとしている証拠ですし、人に負けたくないという気持ちは自分に対する期待が大きいからこそ生まれるものです。それらを発奮材料にして、まずは思うとおりにがんばってみましょう。
初めは人と比べて一喜一憂するかもしれませんが、そのうちに「成長したい」という気持ちは人間が本来持っている欲求だと気づくはず。「なんでできないんだろう?」というような自分に対する怒りの感情も、達成や成長によって満たされると別の感情に変わっていきます。
ネガティブな感情だからといって無理に抑え、いい人になる必要はないと思います。まずは最初の一歩を踏み出すパワーとして利用し、成長させてくれてありがとうという感謝の気持ちに昇華させることができたらいいですね。
PILATESプログラムディレクター マミ先生
子どもにも「どうしたら勝てるの?」と聞かれることがあります。競争心は向上心でもあるので必要なものだと思いますが、それが自分以外のものを変えたい、という気持ちへと向きそうなときは話し合います。
練習に対する姿勢をまねしよう
ピラティスの目的は、自分で自分の体を整えていくこと。本来は人と比べる必要のないものです。
とはいえ、クラスの雰囲気に慣れていないと周りが気になるでしょうし、疲れているときは自分に集中するのも難しいでしょう。もちろんそういう日があってもいいのですが、それでも練習を続けることが大切です。
慣れてくると自分のペースで調整するのも上手になりますし、人と比べて気が散ったとしても集中を取り戻すのが早くなります。
誰かに追いつこうという気持ちは、うまく練習に活用するとよいでしょう。目標とする人をよく観察して、体のラインがよくわかるウェアを着る、レッスンを週2回に増やす、自分の今日の目標を立てる、など、姿勢や動き以外の練習に対する姿勢をまねしてみてはどうでしょうか。
人それぞれ体型も生活習慣も違いますから、クラス中はできるだけ自分の体に意識を向けましょう。人と比べるよりも、過去の自分と比べることでプロセスを楽しんで。
YOGAエグゼクティブディレクター ヤスシ先生
僕は、なまけ者なのに負けず嫌いなところがあります(笑)。美しいアーサナの本などを見てがっかりしたりやる気を出したり……特定の個人ではなく広い対象から刺激を受けて次のステップを踏むという繰り返しです。
心を無視せず、スマートに生きる
生きるうえでのモチベーションを高める道具として扱えば、「ゴール・優劣・結果」という要素も悪者にならないのでは?
一方、この世に「ゴール」は存在するのでしょうか? たとえ何かをなしえたように見える人がいたとしても、その人自身は既に先を見ているかもしれません。私たちは「ゴール」というコンセプトを頭に持ちながら、結果的に「プロセス」を生きているのだと思います。
「バガヴァッド・ギータ」という古い経典では、結果に執着せずに目の前のことに没頭しなさいと説いています。それと同時に結果はどうでもいいわけではない、とも……。そこには、結果は自分一人で決められないという考えもあります。
「あの人のようになりたい」というのも素晴らしいモチベーションです。高度で複雑な脳を持つ人間として、心の切望を無視することはないでしょう。それが自分に笑顔をもたらすのか歯ぎしりをさせるのか。ここをスマートに生きるのがヨガであり、人生だと思います。
文(ヨガ)ヤスシ/取材・文 古金谷 あゆみ/「スタジオ・ヨギーのある生活」vol.15より