マントラは、真言のこと。つまり、お経と一緒なんでしょうか? 日本では葬儀のイメージが強いお経ですが、マントラはもっと身近な存在のように思えます。ヨガインストラクターのキミ先生に、マントラの意味や使われ方、使い方について聞いた、7つのポイントをご紹介します。

1.マントラとお経

お経は、お釈迦さまの言葉がインドから中国に渡ったのち、日本に入ってきたと言われていますね。パーリ語を発音の近い漢字にあてたものと、漢文に訳したものと、わかりやすく和文にしたものと種類があります。

マントラは、日本語では真言と訳され、聖者が瞑想の中で得たインスピレーションの言葉が起源になっており、口伝で今でも僧侶達に伝承されています。神々を讃えたり、様子を描写していたり、祈りの言葉にもなっていたりします。音の持つバイブレーションが、讃えられている神さまの聖なる働きを呼び起こすと言われています。

お経もマントラも、儀式の中で、火を焚き、様々なお供物を捧げながら唱えられることがあります。護摩の儀式は、もともとインドの「ホーマ」という言葉に語源を持ちます。国が違っても、それぞれの言葉で儀式を行う伝統があるようです。

火を焚きながら唱えるマントラが、物質を、粗雑なレベルから精妙なレベルへと変換させるとされています。

2.どんなシーンで使われる?

インドでは、クラスの最初にオームを3回、そして流派に応じたマントラを唱えます。クラスの最後にも、オームで締めくくります。それは、アーサナでも哲学のクラスでも同じです。クラスの前後で唱える以外にも、クラス中にソーハムを唱えながらアーサナを練習することもあります。

アシュラム(日本語では修養所と訳されます。精神性を高める為の場所)では、マントラをインドの階級に関わらず誰でも練習することもできます。

3.どんな効果があるの?

マントラを1回唱えたなら宇宙が微笑むという言葉があります。自分がマントラを唱えると、舌の上でそのマントラに関係する神々や女神が躍る、という表現もあります。
マントラに関係した神々が喜ぶということは、マントラに関係した宇宙の力のサポートを受けることにつながります。

インドの占星学では、ネガティブな力の影響を軽減するようなマントラを特定の時期にだけ唱えるという処方もあります。人生には、良いと感じる時期も悪いと感じる時期も両方あります。でも、できることならネガティブな時期や困難は誰もが避けたいと思うのが普通ですから、その為にマントラを使うという方法もあります。

瞑想中にマントラを使うことは、意識がより精妙になっていくので、囚われていた感情や心が解放されます。マントラのマン=心を表すインドの言葉で、トラ=解放するという意味がありますので、マントラの音が、振動となって原子レベルまでいきわたり、感情が落ち着くのでしょうね。心のコントロールにもなり得ると、近代聖者のスワミ・シヴァナンダジはおっしゃっています。

命を支えるのは体です。体の生命機能を司るのは自律神経です。けれど、それはどういうことでしょうか? 自律神経を構成している源は何なのでしょうか? 自律神経を構成しているのは細胞です。細胞は分子によって構成されています。分子は原子によって、原子は素粒子、素粒子はエネルギーに支えられています。そんな風に根源をたどっていくと、“振動しているもの”、つまりバイブレーションに行きつきます。

マントラの持つバイブレーションは、生命の持つ根源的な振動に働きかけるものなのです。

料理をつくるときにマントラを唱えることもできます。怒って料理をつくると、怒りに満ちた料理になってしまいます。作った人の想いが食事に入って、食べた人の身体に入ります。私たちはいろいろなものから、精妙な形で常に影響を受けています。

食事前のマントラは、祈りです。唱えることで、食事が神聖なものになります。神々へ捧げるマントラであれば、それらの食事はお供物として頂くことができるのです。発声しなくても心の中で唱えるだけでも良いのです。そうすることで、食事を作った人のネガティブな思いや素材自体のストレスの影響を受けずに、心の栄養としても私たちは取り入れることができます。

瞑想用のマントラにつづく

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お話 ヨガインストラクター キミ/文・編集 七戸 綾子