浮気はしない。裏切らない。どんなに胸の開いた服を着ても、ブラ線は見せない。やると決めたらやる。どんなことがあっても人をゆるす……

いつも人を笑わせ、時には笑われていることもあるおのちゃんですが、心の中には自分との約束がいくつもあり、人に知られようと知られまいと、いたって真面目にそれを守ります。清潔感、大事。美意識、大事。自分の中の「格好いい」を守るためなら、失恋の痛みも何のその。

そんなおのちゃんがロハスインターナショナルという会社に入ったのは、これまた「格好いいじゃん、ヨガの会社」というインスピレーションに突き動かされたからでした。ヨガを勉強するためにベーシックトレーニングコースなるものに申し込むはずが、ホームページで「社員募集」の文字をみつけ、いきなり方向転換。もっとお給料のよい会社にも内定していたおのちゃんでしたが、ひとたび自分の中のセンサーが大きく振れれば、それにまっすぐ従うのが小野寺浩子の流儀です。ヨガに対する憧れを仕事に対する情熱に変え、履歴書にはこう書きました。

氏名、小野寺浩子。特技、妄想。五十歳になったらヨガの先生になります。

二〇〇五年五月、東京。

その日、おのちゃんはヨガウェアの詰め込まれた段ボール箱を尻目に黙々と仕事をしていました。おのちゃんのセンサーに狂いはなく、直感で決めた会社の居心地は上々。ヨガウェアの仕入れや販売に関わる仕事も、小さい頃からデザイナーを夢見ていたおのちゃんにはぴったりでした。

なのに時々、こんなんでいいんだろうか、という迷いとも悩みともいえない疑問符が心にひっかかり、小さなトゲのようにおのちゃんをチクリと刺すのです。既に人が足りていて、これぞという仕事がなかったせいでしょうか。いやいや、やると決めたらやろう。おのちゃんが心の疑問符をかき消そうとした、そのときでした。

「小野寺さん、PRに向いてるんじゃない? これから渋谷に行ってイベント仕切ってきて。」

突然の指令に驚くより速く、おのちゃんのセンサーは大きく振れました。なぜピンときたのか、どこにどう惹かれたのか、そんなことを訊かれても困ります。それは、おのちゃんにもわからないのですから。「わかりました」と即答し、渋谷スタジオへ向かうおのちゃんの心に、またひとつ新しい約束が書き加えられました。

仕事を選んでる場合じゃない。しんどくても、何か結果を出すまでは文句言わずにがんばろう。

その日から二年間、おのちゃんは真面目に自分との約束を守りました。小野寺浩子という新人デザイナーによってヨギー・サンクチュアリというブランドが生まれたのも、同じ二年後のことでした。なぜ二年なのか、なぜPRからデザイナーなのか、そんなことを訊かれても困ります。答えはいつも、予想外の展開の後にしかわからないのですから。

◎yoggy sanctuary ブランド公式サイト◎
>>ヨギー・サンクチュアリのショッピングページ
>>ヨギー・サンクチュアリのアイコン‟ジニーパンツ”

文 古金谷 あゆみ/「スタジオ・ヨギーのある生活」vol.14より