どんなに小さなものでも 見つめていると、宇宙につながっている――まど・みちおさん
ヨガを感じる人 vol.4
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私は子どもの頃から、物語のみならず、詩とか俳句や短歌の世界が大好きでした。短い言葉、シンプルな言葉だからこそ、一つ一つの言葉は丁寧で、意味に広がりがあって。言葉と言葉の「間(ま)」にも意味がある。
つまり、言葉(見えるもの、聞けるもの)だけが全てではないんだな、って思っていたんです。目には見えないものにも大切なことはあると。
そんな子でしたから、まど・みちおさんの詩に出会ったのはずいぶん昔でした。理由なんてわからなかったけど、すごく簡単な言葉なのに心揺さぶられる作品がたくさんあります。しかもその多くは身近にある事象が題材でした。
大人になり、子どもを産んでまどさん作詩の童謡を歌うことが多くなり、ふと気がついたのです。ヨガの考え方に通じているなあと。
なんともほっこりとしたかわいらしい詩ですよね 。最後の「よかったな」は私の娘たちもお気に入りの部分で「よかったなぁ~~」と感情込めて読んでくれます(笑)
そしてこの「よかったな」にヨガを感じるのです!! これは、「良(善)」と「悪」の比べたものではなく、まさにヨーガ・スートラの「サントーシャ」の考えなのです。
――「ヨーガ・スートラ」 第二章32節
ヨーガ・スートラはパタンジャリによって編纂されたとされるヨガの根本経典です。
「サントーシャ」とはヨガの実践すべきこと(八支則)の勧めるべき教えの一つで「知足」と訳されています。つまり「足を知る」。今の その状況に満足するという境地です。
冬眠から目覚めたくまさんが「ぼくでよかったなぁ」って幸せを感じるように、私たちも何気ない日常に「今の私でよし!」という自己肯定感に満ちていたいですよね。
童謡の「ぞうさん」も同じく、たわいもない日常の会話に、「お鼻のながい自分で嬉しい」という「知足」感が表れています。
そして幸せはなにかに貪欲にならずとも、「身近なところにあるよ」ということをまどさんの詩は教えてくれます。
なぜならその詩の多くは、かな文字で書かれており、表現も難解なものは一つもありません。極めてシンプル。本当に大切なものはとってもシンプルなところにあるのだと言っているようでなりません。
~詩人まど・みちお100歳の言葉~ 新潮社
事象をじっと見つめるこ とで「梵我一如」を感じていたのでしょう。
あらゆるものがみなつながっている。それは自分自身を強く優しくしてくれる不思議な感覚です。「yoga」の語源も「むすぶ」とか「つなぐ」という意味です。
迷ったとき、困ったとき、楽しいとき、悲しい時。
まど・みちをさんの詩を読んでみてください。
紹介したい詩がたくさんありすぎて、どれを紹介しようか悩みました。どんな感情にも寄り添ってくれるぴったりの詩がみつかることでしょう。そしてそんな感情のずっと奥に、本当の幸せがあることを感じ取れると私は思います。それはyogaの考え方の一つ (人間五層説:パンチャコーシャ)にもつながっています。
なので私の勝手な解釈もヨシってことで…。
あなたは今日、どんな場面で「よかったな」を思いましたか?
「くまさん」のように何気ない日常をじっくりと丁寧に味わいましょう。
参考文献
まど・みちお 人生処方詩集 平凡社
まど・みちお まど・みちお詩集 ぞうさん・くまさん~美しい日本の詩歌⑤ 岩崎書店
文 ヨガインストラクター リツコS/編集 七戸 綾子