私にはできないこと~夫婦で意見が食い違うときは、適材適所と考えてみる~
vol.20
私は掃除が苦手です。でもきれいな環境に身をおきたいです。“ママ”になって、その苦手なお掃除を必死にやるようになりました。仕事をしていない期間でもあったし、おうちにいる時間が長くあったので、自分でもびっくりするほど、掃除マニアになったのです。とりつかれたように掃除をしていた時期がありました。
そうするとどうなるかと言うと、汚さないように過ごしたくなってしまったのです。ところが、子どもの成長は、そんな私のキレイ・清潔への執着を笑い飛ばすようなことばかり。
スプーンに乗せた離乳食は、口元にはたどり着かず床に散乱するし、ティッシュペーパーやトイレットペーパーはちょっと目を放した隙に一箱、もしくは一ロール綺麗にフィニッシュを迎えている。
一番やっかいなのは、「自分で!」ブーム。なんだって自分でやってみたがる。これが天敵でした。「自分でお茶を汲みたい」「自分で片付けたい」「自分で電気消したい」「自分で脱ぎたい・着たい」掃除にはまっている私には、自分でやられることほど迷惑なことはないのです。だから、ついつい手が出てしまって、手伝ってしまう。そうすると、「自分でやりたかったぁ~~」とぐずぐず泣かれてヘトヘトになる。
私も結局、子どもの泣き顔見ながら反省もするけれど、結果こぼれた牛乳やパンくずのかけらが散らかり放題の部屋を見て二重にストレスを受けてしまう。
部屋に入った瞬間、髪の毛が逆立つんじゃないかと言うほどに驚いたのですが、なんとも楽しそうだったのです。両手をお茶でぬらしながら、ガラスのテーブルの上でぴっちゃぴっちゃと跳ねるお茶のしずくを見て、二人でなんだか観察しながら遊んでいる。娘は私に気づくと、「みて~~!」ととっても嬉しそうに両手を広げてきました。それはそれはまぶしい笑顔だったんです。
でも、お気づきの通り、突っ込まなくてはいけない要素が盛りだくさん!
「こぼしちゃってるじゃん!」「テーブル乗っちゃいけないじゃん!」「洋服ぬれてるじゃん!」「風邪ひくじゃん!」「床まで濡れてるじゃん!」って、・・・私とふたりだったら、「もう・・・も~う、もぉぉぉぉ~~!!」と言いながら対応していたかもしれない。
でも、あの笑顔には感服せざるを得ませんでした。ここにいなくて良かった~と思いました。私はこの子の経験の芽を摘んでしまうところだったから。ここにいたのが主人で良かったと心の底から思いました。
シルエット錯視という映像をご覧になったことはあるでしょうか。
Nobuyuki Kayahara [CC BY-SA 3.0], ウィキメディア・コモンズ経由で
同じ現象を見ていても、違った立場で見ているから、起こす行動は違う。夫婦喧嘩のだいたいの理由はここにあるのではないかと私は思います。意見が食い違うことは当たり前。おんなじもの見ていても、左回りだ!右回りだ!全然違って見えるんですもの。
私は主婦なので、こぼれたものは掃除します。でも、主人にとっては、子どもがこぼしたものを子どもがどう対応するのかを観察する余裕があり、つきあってあげているだけなのです。それによって、子どもの笑顔が見れました。でもだからといって私は今後、子どもにそうやって大らかに対応してあげられるか・・・と言ったらそれは無理だと思ったのです。だから、こういうことはこの人に任せよう・・・そして、こういう時間を沢山主人に託そうと思いました。
産後の一年。実は離婚率が高い時期でもあります。今まで恋人同士として、同じ目線で同じ方向を見ていたと感じていたかも知れません。ところが女性は、お母さんになると、お母さんの視線になります。突然、自分が”お母さん”になったことで、ご主人とのギャップに戸惑う方も少なくないのですよ。男性にとっては、少しびっくりしてしまう態度もあるかもしれません。
女性は、自覚しないかもしれないけれど、視線が変わったことによって、パートナーへの態度や物言いが今までと違っています。隣に座って同じ右回りに見ていた景色も、今は逆回転に見ているかもしれません。でも、同じものを見ています。「子ども」「家族」という景色を右回転・左回転に見ながら、違う角度から同じものを見ていることを忘れないでおきましょうね。考え方の相違、捉え方の相違。ネガティブなことではないです。一緒じゃなきゃいけないことなんてないです。
見え方は違うけど、ふたりで同じ景色を見ながら、お互い補い合い、励ましあいながら、家族になっていきましょう。同じことが出来なくっていい。私に出来ること、あなたに出来ること。適材適所のチームワークで子どもの成長を見守っていきましょう。ご縁が合って出会い、ご縁があってここにきた命に対して、「私にできること」「私にできないこと」。「私だからできること」「私だからできないこと」を大切にしながら。
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文 ヨガインストラクター ミヅホ/編集 七戸 綾子