台湾原住民族の村、「不老部落」を訪ねて
THE TRAVEL SPOTLIGHT
羅東駅から歩いて10分とかからないところに、歴史を学べる広大な公園、羅東林業文化園區(羅東林場)がありました。羅東はその昔、日本向けに太平山の檜を切り出して輸出する林業の街だったそうです。
翌朝、タクシーで10時ごろ、待ち合わせの村の入り口にある集会所まで向かいました。そこから歩いて長い吊り橋を渡ります。この柄は、魔除けだそうです。けっこう揺れるので、そわそわしながら歩きました。驚いたのは、吊り橋の上を、スクーターで渡っている人がいたこと。橋を渡りきると、ジープで迎えに来てくれて、数台に分かれて複数のグループで乗り合わせました。ものすごい鋭角な曲がりくねった坂道をまるで遊園地のアトラクションのように勢いよく登っていきます。途中、車を降り、歩きながらのツアーがはじまりました。重いものは入れていいよ、とガイドする少年が背負い籠を差し出します。遠慮なく手荷物を入れさせてもらいました。道の脇に数メートルごとにたわんだ枝があります。そこには竹やひもで作ったシンプルな仕掛けがありました。踏んでしまうと、動物は、足を取られ、自らの体が逆さ吊りになってしまうからくりです。
しばらく歩いていくと、いよいよ村が近付いてきました。まだ姿が見えないうちから、伝統の挨拶、「ローカースー!」と元気よく言ってから、敷地に入っていくのが礼儀だと教わり、みんなで何度も「ローカースー!」と大きな声をあげながら山道を登っていきました。村からも「ローカースー!」と声が返ってきて、歓迎されていることがわかります。
村に着くと、急に視界が開けました。
オリエンテーションのあと、2チームに分かれて村のツアーに出かけました。タイヤル族の男性は、イケメン揃いで話上手。冗談交じりに軽快なトークなので、ツアー客は笑いが絶えません。野菜畑で桑の実を採らせてもらったり、燻製小屋では魚が燻製されているのを見せてもらったり、途中、オレンジやパイナップルなど、美しく盛られたフルーツを食べさせてくれました。
これでうっかり飲み過ぎてしまうようです。
宿に戻ってひと眠り。夢だったのかな? と幸福感に包まれて目が覚め、お土産にもらった月桃の葉でくるんだお団子を見て、本当に行ってきたんだ、と思いました。
出かける前は、”原住民族の村”や”自給自足の生活”と聞いていたので、土の上に座ったり、グロテスクなご飯を食べるのかと覚悟していましたが(!)、全くそんなことはなく、ツアーの流れも食事の内容も、おもてなしも全て洗練された、至れり尽くせりの、とっても充実した体験でした。不老部落は、”原住民族”のライフスタイルテーマパーク。れっきとしたエンターテイメントでした。
写真&文 七戸 綾子