霊水を巡る旅へ。
さて、そんな日本でも一二を争う水に恵まれているのが、「水の王国」と呼ばれている富山県です。中でも、有名なのが北アルプスの麓の町、上市(かみいち)。古来より、不思議なパワーを持つ水が湧き出ると評判を聞いた人々が、霊水に導かれてやってきます。
上市を訪れて、まず目につくのが、青空にそびえる剱岳(つるぎだけ)です。日本でもっとも登頂が難しいと言われている通り、標高2999メートルに達する高峰は鋭い刃物のよう。この神々しい堂々とした姿からか、山岳信仰の対象として崇められてきました。昔から、多くの修験僧が上市に集まってきたのですが、その目的の一つが、“水”でした。
「行者穴」と呼ばれる洞窟の奥から湧き出る穴の谷(あなんたん)の霊水は、昭和60年に環境省選定の全国名水百選に選ばれた唯一の霊水です。さらには、胃腸にいいと言われている城山(じょうやま)の湧水、目に効能がある大岩山日石寺(おおいわやまにっせきじ)の藤水(ふじみず)、弘法大師がが錫杖でついて湧き出させたという護摩堂(ごまどう)にある弘法大師の清水など、まるで霊水のデパートのよう。毎日、自分好みの霊水を求めて、水をくみにくる人々でにぎわっています。
写真 ペロ、澤井俊哉/文 美濃部 孝