石巻OCICAの里を訪ねて vol.2
SPOTLIGHT IN JAPAN
朝いちばんに伺ったのは、元個人医院だった3階建ての建物が、震災時に「石巻市災害ボランティアセンター」として使われていたところ。スタジオ・ヨギー京都の店長、松本千矢さんは、震災の1年半後に、当時働いていたパタゴニア鎌倉で「ボランティアインターンシップ・プログラム」に名乗りをあげ、ここを拠点に1カ月間滞在し、活動していたそう。電話番やボランティア受け入れの予約など事務作業や、カーシェアリングの車を運転して届けるなど多様な仕事をするうちに、緊迫感のつづくボランティアさんに向けて、また仮設住宅の集会所で被災したお年寄りに向けて、ヨガクラスを提供していたそう。
「ずっとせまい仮設の部屋にこもっているので、久しぶりに運動した、と、涙を流して喜んでいただけたことを、今も覚えています」と、千矢さんは話した。
屋上で、左から今回の案内をしてくれた、OCICAを立ち上げたつむぎやの友廣裕一さん、リーさん、千矢さん、つむぎやの斉藤里菜さん。斉藤さんは、OCICAを機に石巻に移り住んだ、笑顔が弾けるパワフルな女性。
スートンとローリーがアイコンの、カーシェアリングを立ち上げた”タケさん”こと吉澤武彦さんとも帰り際に会えた。高校生のときに姫路で阪神淡路大震災を体験した。以前はサラリーマンをしていたが、震災を機に石巻に移り住み、長期にわたってカーシェアリングが続けられるよう、今も活動を続けている。(現在はOPEN JAPANの代表も引き継いでいる)
気さくなご主人米倉さんと奥さんと記念写真。リーさん、千矢さんが手にしているのは、ネパール発のナチュラル化粧品ブランド「ラリトプール」のパンフレット。発展途上国で女性にメイクをするワークショップ「コフレ・プロジェクト」を通じて、女性が本来持っている自信や尊厳を取り戻すきっかけづくりをしていた向田麻衣さんが、新たに立ち上げたブランド。ここは、彼女のおばあさまのおうちだったのですね。
石巻の町の中央に位置する日和山にある鹿島御児神社に行ったとき、ふっかふかの猫が現れ、きさくなお母さんが抱っこできるよーと抱えさせてくれた。
お守りを買おうと呼び鈴を押したら、さきほどのご婦人が出てきて、お守りや神社の云われをとても丁寧に教えてくれた。聞けば、彼女は神主さんだった。女性の神主さんに会ったのは初めてだった。お礼を言って去ろうとすると、「お元気でいてくださいね~」と声をかけてくれた。ふだんならなんとも思わない挨拶が、ずん、と胸に響いた。神主さんは、本当にそう願っている、と思った。
ここで使われている家具は、オリジナルにデザイン、製作されたもの。若いデザイナーさんが一人でつくっているそう。
ゆめハウスの表札の横ではにかむ八木さん。生まれ育った町、女川で震災後、女性たちが楽しく活躍できるような仕事を生み出して来た。そしていま、八木さんのお父さん・お母さん世代が集える場所を創出している。この日も、タウン誌が取材に訪れていた。
八木さんが様々な活動をする源はなんだろう。こんなことを話してくれた。
「人は、悲しみよりも、楽しいことが上回る、笑顔になれると思っているの。楽しめる人を増やしたいんです。こもりっきりの人が出かけるきっかけになればいいな、と。そんなふうに人を変えるのは、けっきょく人なんだと思う。モノやお金で変わるわけじゃない。他県の人が会いにくると、忘れているわけじゃない、思ってくれているんだ、というのが伝わります。はるばると来てくれているのだからね」。
八木さん同様、OCICAをはじめ、つむぎやで活動する友廣さんも言う。
「会ってみたい。やってみたい。というような、人を動かすのはポジティブな力だと思う」。
vol.1はこちら。
写真&文 七戸 綾子