主に茶道具や焼き物などに付けられる「銘」というもの。言い得て妙!だったり、何の事やらさっぱり?だったり。俳句や短歌にも通ずる風流な文化であると感心もする。そんな遊び心を拝借して、身の回りの食べ物に銘を付けてみる。

食べ物と言ってしまったが、やはり季節の移ろいを感じられる果物がおすすめ。時に、その形や色にハッとさせられ、自然にはかなわないなと思う。それに、すでに腐敗に向かっていくしかない刹那的なところもいい。

わたしはこの洋梨に「砂嵐」と名付けてみた。銘はあだ名のようなものだから、気軽な気持ちで付ける。ちなみに家人に問えば「ぶつぶつ緑」と返ってきた(これはさすがに即却下)。インターネットの検索で、「銘 茶杓」などと入力すればいくつかの銘一覧のサイトが見られる。茶杓にも銘を付けるというずいぶん面白い世界があって、銘を付けるのに参考になる。

ちょっとマニアックな話になってしまうが、骨董の目利き、青山二郎は「白釉黒花梅瓶」という壺に、「これさえあれば家を売って電話ボックスの中で暮らしてもいい」と「自動電話函」という銘を付けたそうだ。ここまで自由な発想が出来れば楽しいだろうと思う。

こうして果物に銘を付けて楽しんで、うやうやしく数日箪笥の上にでも置いて、完全に熟れたところを頂く。

写真&文 中村 宏子