わたしの育った町の商店街の外れには、毎週月曜日になると軽トラックで味噌を売りに来るおじさんがいた。荷台に積まれた十ほどの味噌樽には、円錐型の透明な蓋がしてあって、何々県産などではなく、甘口のこしとか、中辛のつぶとか、そういう売り方をしていたように思う。もちろんスーパーマーケットや、よろず屋的食料品店にもパック詰めされた大手メーカーの味噌も売っていたのだが、母はいつも味噌屋のおじさんから買っていて、市販のものは買っていなかったが、家で味噌を仕込むなんていう事も無かった。

味噌作りを始めて10年目になる。一体きっかけは何だったのかと思い返すと、生協のような宅配のカタログに「そろそろ手前味噌、始めませんか?」というような文句があったからだと思い出した。作り方も載っていて、意外と簡単そうだなぁと飛びついたのが最初だった。最近はワークショップ的に味噌作りを体験出来るところも多いようで、ブームとは言わないが、親の世代よりも確実に味噌作りは浸透しているから不思議なものだ。

今年も2kg分の大豆で味噌を仕込んだ。大豆を浸水させる。夏なら6時間で戻る大豆も12時間以上かかる。圧力鍋を使って大豆を蒸す→蒸し上がった大豆を晒で作った袋に入れて麺棒を転がしつぶす→麹と塩を混ぜ合わせる。この作業を何度も繰り返し、出来上がった種をソフトボール大に丸める。容器の底に向かって思い切り投げ入れる。表面をならし、塩で蓋をして、紙蓋をかぶせる。重しを乗せる。更に新聞紙で蓋をして紐でくくり、梅雨明けまで寝かせる。

数日前、友人たちと4人で、大豆10kg分の味噌を仕込んだ。2台の圧力鍋をフル稼働させても、6時間かかった。なかなか終わりの見えない作業だが、みんなで共有する時間が楽しい。最後に、大量の“味噌ボール”を時計回りに1つずつ取って容器に入れていく作業で、達成感と完成への期待が高まる。それぞれ家に持ち帰り、1年後の報告が楽しみである。

写真&文 中村 宏子