――幼い頃からヴァイオリニストとして世界を舞台に活躍されていますが、演奏にはどのような気持ちでのぞむのでしょうか。
五嶋 演奏の前は今でも緊張してしまうことがありますが、アドレナリンを緊張ではなく、エキサイトメントのほうに持っていくように気持ちをコントロールしています。コツは、鏡を見て練習し、自分に自信をつけること。自分に少しは酔わないといけませんから。調子があまりよくないなと感じたときは、10年くらい前からこの方法を実践しています。それから、演奏前にはシャワーを浴びますね。体をきれいにしてから、お客様の前に立ちたいですから。昼寝をしてリラックスをすることもあります。

――ヴァイオリンを弾くことについて、どのように感じていらっしゃいますか?
五嶋 母も姉もヴァイオリニストという家庭で育ち、3歳からヴァイオリンを続けていますが、僕にとってヴァイオリンを弾くことは、自分の中を流れる“血”のようなもの。幼い頃から、人生の一部というか、ごく自然なこととして一緒に生きてきました。じつは、男としての自分はスポーツのほうが好きで、空手は7歳から続けていますし、その他にもゴルフやラクロス、陸上など、さまざまなスポーツをやってきました。

向上心を持って、プロセスを楽しむ

――五嶋さんが幸せを感じるのは、どのようなときですか?
五嶋 幸せを感じるときは決まっています。それは、夜眠る前などに「昨日の自分より、今日の自分が好き」と思えたときですね。そこで大事なのは、何かを成し遂げようという向上心を持ち続けること。そして、成し遂げるためのプロセスを楽しむことだと思います。僕の場合は、空手などのスポーツを通して幸せを感じることが多いですね。空手の大会でパーソナルレコードを破ったときなどに得られる快感は特別です。それは、ヴァイオリンを弾くことではなかなか感じられません。ヴァイオリンは自分にとってあまりにも身近な存在ですから。皆さんも毎日同じような仕事をしていると、なかなかこのような快感を得られないと思うので、どんなに忙しくても何か趣味を持つことは、心の健康を保つためにも大切ではないでしょうか。

――これからやってみたいことはありますか?
五嶋 ヴァイオリニストだけではない自分を探したい、という気持ちがあるので、頭の中にはつねにやりたいことでいっぱいです(笑)。サーフィンやダイビングもやりたいですし、スカイダイビングやカイトボーディングなど、リスキーなスポーツにも惹かれます。音楽では、DJやロックバンドもやりたいですね。それから、スキーもゴルフも、水泳ももっと上達したいですし、空手もさらに上を目指しています。スポーツをしていると、よく手をケガしないかと心配されるのですが、まったく気になりませんね(笑)。

写真 野頭 尚子 / 文 小口 梨乃