幸せとは何か?
vol.3
何かとつながる
僕は今、軽井沢に新しいコンセプトの学校をつくっています。この学校をつくるというのは、結局子どもたちが幸せになってもらうのが一番の目的なので、何が幸せかを常に考えるようになりました。
幸せにもいろいろな要素があるとは思いますが、今のところ、次の3つが特に大事だと思っています。
まず第一はつながり。つまり、何かとつながるということです。それは自分の家族でもいいですし、会社やコミュニティでもいいでしょう。あるいは自然や宇宙など、もっと大きなものであればさらに幸せなのかもしれません。ダライラマのように宇宙など大いなるものとつながっているような人はとても幸せなんだろうと思います。つながりがあるだけで、人は幸せになれる。どこにもつながりが感じられない人は、物質的に裕福であり他の要素ががすべて満たされても幸せではありません。ビジネスで大成功を収めても孤独に死んでいく実業家は少なくないですし、決して幸せだとは思えません。
少しでも成長する
それに対して、職人などは、経験を重ねていけばいくほど少し少しずつ成長をしていく。ですから、頑固な鮨職人なんかは、生涯自分の納得いく鮨だけを追求して握っていて、ある意味一生上り坂にいる訳ですから、とても幸せなんだと思います。年をとりながらでも日々経験を積んで少しずつでも成長していけるって素晴らしいことですよね。その意味ではビル・ゲイツなんかはとても賢いと思います。もし彼がマイクロソフトの経営をずっと続けていたら、彼をもってしても恐らく、アップルには負けていたでしょう。そうするとビル・ゲイツの幸福感はぐんと下がったんじゃないかと思います。ところが、会長を退いて、奥さんと慈善基金団体であるビル&メリンダ・ゲイツ財団を設立した。彼はそこで新たに成長をする舞台を得たわけですから、すごく幸せだと思います。
同じように先ほどお話したオリンピック選手も何かで登り坂にいると思える違った舞台を見つけるのがいいのではないかと思います。人は自分が何かで成長していくことに幸せを感じるんだと思います。
自分を表現する
しかし本質は東洋人でも西洋人でも同じで、ありのままの自分を自由に表現できるかどうかだと思います。リーダーに合っているのならリーダーでもいい。フォロワーが合っているならフォロワーでもいいと思います。トップになる必要は全然ありません。しかし、今の現代資本主義の世界ではそこが勘違いされている気がします。男性でも女性でも多くの人たちが社会的に偉い人になったりお金持ちになることが成功だと勘違いしています。それがその人が本当にやりたいことだったらいいんですが。自分が一番やりたいことがいい旦那さんやいい奥さんになりたいのであれば、それを実現させることが一番幸せなのです。
最近LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの略)の人たちの活動を応援してるんですが、彼らの多くは子どもの頃からずっと自分を表現することができなかったつらい経験をもっています。それが今、カミングアウトしてみんなでLGBTの活動を通じて仲間と一緒に自分を自由に思いっきり表現している。更に、仲間と一緒に自分たちが心地好い社会を自らの手で創ろうとしている彼らはとても幸せに生きているように思えます。もちろんその裏側でカミングアウトできずにとても苦しんでいる人がたくさんいることを忘れてはいけないんですが。
ありのままの自分を見つめて、それを自由に思いきり表現することこそが、幸せに繋がるのではないでしょうか。
語り 谷家 衛 /イラスト 山﨑 美帆 /構成 サンオープロダクションズ