見島の宇津観音に不思議な砲弾が置かれています。
野ざらしにされて、錆びていて、何も書かれていないので、何だろうと思います。
郷土史家の方に聞いてみると、その方の同級生のおじいさんが、朝鮮に働きに行った折、日露戦争が始まり帰国を余儀なくされ、記念として持ち帰った物だと家伝されているそうです。
今は錆びてポロポロの状態で小さいですが、持ち帰った時はまだ大きかったそうです。
(当時の砲弾には爆薬は装填されていなかった。)

ある年に宇津観音に行くと、いつもある砲弾がないことがありました。

萩にある萩博物館に行くと、そこにあの見島の砲弾があるではありませんか!
「日本海海戦当時の砲弾」という題名で。

「お手をふれないで下さい」と書いてあるので急に見島の砲弾が、よそよそしく感じられました。

そこには日露戦争の時に、バルチック艦隊の砲弾が、見島近海まで届いていたというようなことが、そしてその海から拾い上げたものがこの砲弾だと。

博物館、おそるべし。

郷土史家の方にそのことを確認する為にお聞きしたところ、「わしもそれを見た時、驚いたよ、何しろ本人から聞いた話だからね。(笑)でも誰が拾い上げたとは書いていなかったじゃろ・・・」

別の年に宇津観音に砲弾が前と同じように戻っていた時、なんかすごく安心しました。もちろん、手はふれていいみたいでした。
相変わらず、外に出しっ放しでしたし・・・

本当に見島って、そんなところが等身大です。
そして、中央に向かう途中で、こういう風に歴史はすり替えられていくのかと小さく思いました。

この不動明王、どこか身近ですよね。こういうところが本当に愛らしく感じてしまうのです。

写真&文 野頭尚子