宇津観音の砲弾
vol.4
野ざらしにされて、錆びていて、何も書かれていないので、何だろうと思います。
郷土史家の方に聞いてみると、その方の同級生のおじいさんが、朝鮮に働きに行った折、日露戦争が始まり帰国を余儀なくされ、記念として持ち帰った物だと家伝されているそうです。
今は錆びてポロポロの状態で小さいですが、持ち帰った時はまだ大きかったそうです。
(当時の砲弾には爆薬は装填されていなかった。)
ある年に宇津観音に行くと、いつもある砲弾がないことがありました。
「日本海海戦当時の砲弾」という題名で。
「お手をふれないで下さい」と書いてあるので急に見島の砲弾が、よそよそしく感じられました。
そこには日露戦争の時に、バルチック艦隊の砲弾が、見島近海まで届いていたというようなことが、そしてその海から拾い上げたものがこの砲弾だと。
博物館、おそるべし。
別の年に宇津観音に砲弾が前と同じように戻っていた時、なんかすごく安心しました。もちろん、手はふれていいみたいでした。
相変わらず、外に出しっ放しでしたし・・・
そして、中央に向かう途中で、こういう風に歴史はすり替えられていくのかと小さく思いました。
写真&文 野頭尚子