島の北の端っこに、北灯台という灯台があります。
別に有名でもなんでもない灯台です。

細い道をずーっと行くと、その先にポツリとあるのですが、その感じがとても好きです。
夜行って、次の日の朝行くと、その細い道に蜘蛛の巣が張られて、バイクで通りすぎると、一瞬で全身蜘蛛の巣だらけになったりします。
一晩で大きな蜘蛛の巣が作られるのですね、道の真ん中に。かなり手強いです。

なんでこの島に自分が惹かれるのか知りたくて、片っ端から撮影して廻って、とうとう明日東京に帰るという夜に、北灯台にもう一度来た時に出会った風景です。

北灯台の周りは、ほぼ360度が海なのですが、その水平線に沢山の漁船の灯りが一面に灯っていました。夏だったので、多分イカ釣り漁船だったのだと思います。

あの小さい一つ一つの灯りからこの灯台の灯りが見えていると思ったら、当たり前のことだけれど、安心と嬉しさが。
「こちらから見えるものは、あちらからも見える」
あまりにも当たり前なことですけれど、すべては双方向なのだと思えた瞬間だったのです。

ひとりぼっちだとしても、ひとりぼっちじゃないみたいな感覚、
一人だと思っていたら、みんなが周りにいたみたいな。

みんなの中にいると気付かないけれど、一人になるとよく分かる感謝の気持ちなのでしょうか。

この写真は本村の見島総合センターの資料室にある写真です。

この写真を初めて見た時、すごく驚きました。
見島から戦争に行った人達の写真でした。
こんなに小さい島から、こんなに沢山の人たちが戦争に行ったのかということの驚きと、こんな小さい島も戦争という中央が決めたことには従わなければならなかったという驚きです。

本当に小さい存在だと、忘れ去られてしまうのではないかと思ってしまいます。
そういう意味では、すごくはかないですが、このはかないものにも、ちゃんとした営みがあることが、すごく大事だと感じます。

写真&文 野頭 尚子