火のはなし
vol.3
火の元素とは、ヨーガやアーユルヴェーダで、私たちの心身をはじめ宇宙の万物を構成しているとされる五大元素(空、風、火、水、土)のひとつ。五つの元素はそれぞれに役割を持ち、例えば火の元素は、体内では主に消化と代謝をつかさどっている。また、体温の維持、知力、思考、視力なども火の元素の働きによるものだ。アーユルヴェーダの体質論でよく耳にするドーシャ(ヴェータ、ピッタ、カパ)は、この五つの元素を三つに大別したものと考えるとわかりやすい。
「燃えさかる炎は、火の元素の集合体。つまり目に見える形になったものです。それに触発されて、自分を構成している火の元素が増大し、汗が出たり、情熱や怒りがわいたりするなど、火の元素と関連する心身の作用が活発になることがある。そうした総合的な結果が、いわゆる本能が刺激されるような感覚を生み出したのかもしれませんね。ただ、火を見てすべての人が同じように感じるわけではなくて、火を苦手と思う人もいれば、他の四つの元素と関連するもの――大空、風、海の水、大地にふれた時に同じように感じる人もいます。
ところで火にまつわる儀式めいたことといえば、真言宗や天台宗のお寺で見られる護摩(ごま)が思い当たる。そして、その起源となっているのはインドに5,000年以上も前から伝わる儀式のひとつ「ホーマ」。マントラ(真言)を唱えながら、特別な木の枝や薬草、ごはん、貴金属、布、花、お菓子、ギーなどさまざまなお供えものを火の中にささげ、“神”の助けを得るという火の儀式だ。ちなみにここでいう神とは、簡単にいうと自然の力や超越的なパワーのことをさす。
日本の左義長も、正月飾りによって迎えた年神を、それらを燃すことで炎とともに見送るという意味があるのだそう。なるほど火っておもしろい。
写真&文 松田 可奈 写真提供(ホーマ) <a href="http://vedacenter.jp" target="_blank">ヴェーダセンター</a>