ごちそう満開、春の海
vol.12
3月の終わり、海辺でわあっと声をあげる光景に出くわした。浜を覆うようにずらりと干されているのは、わかめ。自分の母親世代とおぼしきおばちゃんたちが、手を休めるひまなく、海から上がったばかりのそれらを洗濯バサミに吊るしている。わかめといえば乾燥ものか塩蔵。もしくは、ある時期見かけるパック詰めの生わかめ。浜に行けば新わかめが買えるよ~との事前情報がなければ、「この昆布みたいなのなんですか?」。200パーセント聞いてしまっていたに違いない。
ああ、春の海っておいしいな。
海に限らず、身近になった生産者さんの働く姿を見るたび、(かろうじて)人生折り返し前だというのに、「あ~のんびりしたい~」と隙あらば思ってしまう自分をかえりみる。さぼってちゃイカンとおてんとさまがこの環境に導いてくれたような気がしないでもない。「次は釜揚げしらすやな」。肉屋のおじさんご自慢のしらすメンチをほおばりつつ、そんなこんなを考えるのだった。
写真&文 松田 可奈