世界ではじめてのヨガのアーサナの記録は、坐って瞑想する姿が刻まれたインダス文明の遺跡だとされていますが、では、宇宙空間ではじめてのヨガは? スタジオ・ヨギー会員の石井正則さんとキミ先生に、人類初!宇宙でヨガのお話を聞きました。

――マサさんのことは「常連さんですごい人がいる」とよく噂を聞きますが、いったい何者なのでしょうか?(笑) 耳鼻咽喉科の先生なんですよね?

石井正則さん(以下マサ) はい、そうです。JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙飛行士の選考委員や医学審査会の委員もしています。日本人として初めて宇宙に長期滞在した若田光一さんとも、彼が選ばれたときからの知り合いです。若田さんが宇宙から送ってくれたメール、まだありますよ。

――宇宙から携帯にメールですか?!

マサ ええ。人類初の「宇宙でヨガ」の写真がメールで届いたのは2009年7月、ちょうど渋谷スタジオにいたときでした。感動して目頭が熱くなりました。まわりにいた先生方にもメールを見せて、みんなで興奮したのを覚えています。

ディスカバリー号打ち上げの1年半前に若田さんに会ったとき、まだ誰も宇宙でヨガをしたことがないという話になり、そこで木のポーズを教えたんです。でも、ISS(国際宇宙ステーション)では分刻みのスケジュールで忙しいですし、実現するかどうか不安だったのでキミ先生に相談しました。

写真提供 JAXA/NASA

キミ先生(以下キミ) ヤスシ先生にもアドバイスをいただき、宇宙空間でもできるヨガのポーズをアレンジしました。その話があったときは、たまたまヨガのトレーニングを受講中だったので、一緒に受講したケイコ先生、ユウ先生、トシ先生もお昼休みにアイディアを出してくださって、その場で写真撮影。後日、撮影に協力してくださったリー先生の写真も加え、資料をまとめてマサさんにおまかせしました。

マサ 椅子やドアを使ったり、「ビッグバンのポーズ」という宇宙らしいネーミングまで考えたり。ポーズの説明を若田さんに送った後、さらに「おもしろ宇宙実験」という公募でキミ先生らの実験が採用されました。

キミ マサさんありきの結果です!

――宇宙でするためのヨガとは、どんなものだったのですか?

キミ 無重力状態なので、操縦席に座ってできるヨガやストラップで浮いてしまう身体を安定させながら、抵抗をつくるように工夫しました。また、気分を落ち着かせる呼吸法や、活性化する呼吸法、脊柱起立筋を強化するポーズを主に提案しました。

写真提供 JAXA/NASA ビッグバンのポーズ。

マサ このハンドスタンドならぬフィンガースタンドを見ると、きれいな背骨のS字カーブがあるでしょう? 宇宙では無重力のため急激に筋肉が萎縮するのですが、若田さんは毎日2時間以上トレーニングをしていたので、それぐらい筋力が残っているという証拠ですね。

――なるほど! 若田さんのご感想は?

マサ 帰国後の報告会では、「リラックスするためにヨガをした」と言っていましたよ。

写真(マサさん・キミさん)・ 取材・文 古金谷 あゆみ/「スタジオ・ヨギーのある生活」vol.13より