菩提樹をマーラーに使う理由
インドには、アシュヴァッタ樹(Aśvattha)というとても不思議な樹があります。この樹は、根を上方に伸ばし、枝を下方にひろげます。インドの聖典バガヴァッド・ギーターの中で、その葉はヴェーダの賛歌であると説明されています。
アシュヴァッタ樹は、古代より神々の住処とあがめられており、特別な霊力があると信じられてきました。お釈迦さまはこの樹のそばに座し、深い瞑想に入り、ついに悟りを開いたといわれています。
悟り、真理の知恵のことをサンスクリット語で「ボーディ」(bodhi)といい、それは漢字で「菩提」と表されます。お釈迦さまがボーディを得た場所にちなんで、アシュヴァッタ樹は菩提樹と呼ばれるようになったのです。つまり、日本の菩提樹とは別の種類だそうです。
マーラーは、マントラ(真言)を唱えて瞑想する際に、ひとつずつビーズを指で手繰って、マントラの数を数える道具です。通常27、54、108のビーズでできています。瞑想をしなくても、身に着けているだけでも心が清められ、神聖な意識に浸ることができるといわれています。
菩提樹の実のほか、真珠、水晶、百壇など様々な天然石でも作られていますが、古代より神聖な菩提樹の実は別格で、マーラーとして重宝されています。シヴァもこの菩提樹の実のマーラーを首や腕に何重にも巻いた姿で描かれます。
文 ヨガインストラクター リカ/編集 七戸 綾子