アーユルヴェーダの食事の考え方は「何をたべるかではなくどぉ食べるか」ということを大切にしています。「何を食べるか」は食材、「どぉ食べるか」は食べる人のことです。

どんなに良い、と言われているものでも、それを食べる人の消化して代謝する力(アグニ)が正常に働いていなければ身体を養うことは出来ないし、負担になることも生じます。

世の中に様々な情報があり、食材の研究は進化し、世界中の良いと言われているものでも入手出来ますが、消化し代謝する力は個人個人の中に存在しそれぞれ違いがありますから、自分の消化力に応じて自分に合うものを取り入れる。自分に合うものの意味は体質・年齢・生活習慣・環境・季節などを考慮して選択するということです。

また、食物の性質、調理法、組み合わせ、土地、時期、食事に油質と6味(甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、渋味)が含まれるもので、自分を見ながら適量食べることをすすめています。

夏の終わりのこの時期は、南北に長い日本の気候は場所により現れ方の違いはありますが、夏至から夏の間は日照も長く、気温も高いので熱(ピッタ)の影響を多く受けています。夏の間ずっと高温が続いた地域。炎天下の屋外で仕事をしている人。熱い厨房で働くひと。等々熱の影響は色々あります。

暑く乾いた身体をホッと鎮める食材に冬瓜があります。冬瓜は夏に収穫され、冬の初め頃まで保存できるので、夏の間蓄積したピッタを和らげるのにピッタリな食材です。

冬瓜は水分を多く含み、癖もないのでどんなお料理にも合います。
例えば、千切りにして澄まし汁に入れる沢煮椀。野菜との炊き合わせ。お出しで煮て薄いとろみをかけるのも、のど越しが柔らかく食べやすいです。

秋分の日を過ぎて空気がひんやりして温かいものが恋しく感じるようになってきたら、里芋、ゴボウなどの根菜類と合わせて食べごたえのあるお汁にするのもいいですね。切り方、味付け、合わせる食材の組み合わせを変えながら、初秋から晩秋にかけて夏の疲れを癒しましょう。

ちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、自分の住んでいる場所の周辺の旬の食材を調理して出来立てを食べるということです。

秋は美味しい旬の野菜や果物がたくさんありますね。秋分の日を過ぎると空は高く、空気は澄み、日暮れが早くなってきて虫の音の大合唱が聞こえてきます。実りの秋を向かえて味覚だけでなく、嗅覚、視覚と五感を楽しませてくれます。

私は、青いみかんと栗が並んでいるのを見ると「秋だなぁ。。」と感じます。暑い夏、台風シーズン、秋の長雨を過ぎて今年の食物の生育、収穫はどんな様子なのかと気になりますから、
梨や柿、りんご、栗、松茸、じゃがいも、さつまいもなどの根菜、さんまや鮭など秋の食材を見ると天の恵み、自然の力にありがたいなぁという気持ちになります。

夏の強い日差しが和らいで空気が澄み、徐々に気温も低くなる頃、秋分の日から冬至に向かって私たちの体力、消化力も徐々に増してきます。甘く水分たっぷりの新米、ほくほくした栗や根菜類、脂ののった魚など美味しい秋の味覚を食べるのに消化力がしっかりしてくるのは、天の助けのように感じます。

心の落ち着きを取り戻してくれる滋養強壮の甘いスープ につづく

文 アーユルヴェーダ講師 新宅 あきえ/編集 七戸 綾子