「幸せな循環」を生みだす、エシカルアクセサリー 2/2
フーヒップ/シーズ・バイ・フーヒップ
~アーティザンの成長とともにあるブランド~
私たちは、工場ではない
私たちは、仕事ありきではなく、人ありきで仕事をしています。コンセプトありきで立ち上がるエシカルブランドもありますが、私たちは、たまたま出会ったフエの女の子たちをなんとかしたい、という想いでスタートしたブランドです。
ベトナムのなかでも差別を受けるようなエリアに育った、いろんな人生を背負った女性たちが、お金をもらうためだけではなく、成功体験を積み重ねていけるように。<こうしなきゃいけない>に、人が合わせるのではなく、その人のために合わせたいろんなやり方で、アトリエを含むフーヒップの運営はしていきたいと思っています。人にやさしく仕事が続けられる環境にしていきたいです。
ミッションを共有した仲間たちが適材適所で活躍していけたらいいな、と思っています。メンバーには女性たちが多く、結婚、出産、子育てなど、ライフスタイルの変化があるなかで、同じ働き方を続けられない時期というのがあります。そのとき、選択肢として、「やめる」のではなく、それぞれの役割をそのときどきに応じて、働き方も変化しながらやっていければ、と思います 。
私がこうして今フーヒップの話をしていること、ドッツジャパンという会社を設立し経営やブランドのマーケティングにあたっているのも、たまたま今、私にできることがそこにあって、その役割を果たすことができるから。その時々のシーンで、今後も変化していけばいいと思っています。大切なのは、一人一人がその人だからこそ果たせる役割やスキルがあって、そういったメンバーがミッションを共有してチームワークで動いているのがフーヒップのあり方だと思っています。
一人一人の成長につながり、得意を伸ばせる仕事のあり方と役割を考えています。具体的にはアーティザンの中にもデザインが好きな子、もくもくと技術を高めることが得意な子、いろいろです。それぞれの個性やこうなりたいという希望をもてるよう促しながら、そこをフーヒップを通して実現し表現できる場にしていかれるようにと毎コレクションごとに工夫しています。私たちは、工場ではないので!
フーヒップのアトリエは、週5日間、月曜日から金曜日に稼働しています。基本は8時間で、4時間ずつ、という場合もあります。繁忙期は、週末も稼働します。夏は暑すぎて仕事にならないので、早朝からお昼まで働くというように変動もあります。
生産には目標設定があります。パーツごとに担当が変わるのではなく、基本は一人がひとつを作り上げていきます。商品に責任をもってもらいたいから、だれが作ったかを明確にしています。ミスや壊れていた、ということがあれば、お給料にも反映されます。
厳しいようですが、その代わり、時間通りに、無遅刻、無欠席で、という場合には、プラスの評価になります。ほかにもいろんな基準があって、誰かに何かを教えてあげた、とか、フエハッピープロジェクトに参加した(ボランティアをした)ということも評価されます。なかには自分のもっているものがなくなる気がして、怖いのか、教えることをしたがらない子もいますが、速くたくさん作ることよりも、チームワークでみんなでよくなっていく、ということを体現するようにしています。
アーティザンの成長とともにあるブランド
基準があるなかでの、手仕事による個体差はあるかもしれません。デザイナーがおこしたレシピ(設計図)をみて、アーティザンが作ります。技術者のレベルやデザインにもよりますが、感性のトレーニングも必要になります。
レシピに天然石を使う、と書いてあるとすると、形や色が違うものを“いい感じ”で並べるのが感性です。たとえば、絹糸は細く、編んでいくのに時間がかかりますし、リング(輪)の大きさが小さかったり、楕円だったりするほうが難しい、など技術力を要する場合もあります。
高度な技術と感性を必要とするものには、たとえば伊勢谷友介さんが率いるリバースプロジェクト(REBIRTH PROJECT)の「いのちかレザー」を使ったラインがあります。日本では害獣として処分されてしまっている猪や鹿がいるのですが、植物由来のなめしをした鹿の皮を使っています。
大き目のリングのもの、糸をミックスして編むもの、なども高度な技術と感性が必要です。また、Nielaコレクションに代表されるマーキス型のモチーフは、アーモンドアイというベトナム女性 アーティザンの瞳にインスパイアされています。その楕円のかたちを絹糸で編みこんでいるのですが、まん丸じゃない分難しいのです。
展示会を年2回、春夏、秋冬とおこなっています。主に2つ目的があり、1つは長く愛用してもらえるよう、ファッションとして。もう1つは作り手たちの成長のきっかけとしています。熟練のアーティザンにとってもコレクションごとにチャレンジできるようデザインし、制作、発表しています。
おしゃれで素敵、というファッション目線で、またはデザインとして評価いただいた時は嬉しいですね。素敵なアクセサリーなので購入したら、背景にあるストーリーを知ってますます好きなりました、というようなお声をいただくとさらに嬉しくなります。
同時に、デザインや品質等に対する厳しいお声もいただきます。世界中の素晴らしい手仕事や名品をご覧になっている方々にいただくコメントは、グローバルスタンダードで仕事をしている私たちの何よりも向上に繋がるとありがたく思います。
前編:~シグニチャーモチーフに込めた想い~
お話し 大野 真貴子/編集 七戸 綾子