子育てが始まって、お母さんたちは日々大変に追われます。まるで24時間フルタイムの仕事のようです。

先日も、産後リカバリーのクラスで話題になったのが、
・電車の中で愚図ったら?
・お出かけ先で、オムツがもれたら?
・離乳食が進まない…決まったものしか食べてくれない
・笑い方に特徴があって、大丈夫か心配…
・上の子の方が大変で…
・お昼寝の時間が変わってきてお出かけが難しくなってきた…
・人見知りが…

本当に、お母さんは毎日神経すり減らして目が回りそうです。頼もしいなと思うのは、そんな中、二人目・三人目育児に励んでいる先輩ママさんがそこに居てくれること。
「心配だったけど、どうにか元気に育ってくれてるから、大丈夫だと思うよ~」
「今はしんどいけど、そのうち楽になるよ~」

何人かのママたちが笑顔で、「うんうん!!」って大きく頭を振ってくれている。それを見て、「そっかぁ~」って元気・ヤル気が出てくるママがいる。本当に温かなやりとりです。

それでも心配は常に付いて回ります。それだけ、大切な存在だということの現われなんですけどね、心配に取りつかれるともう、緊張に体は縛られて、呼吸が乱れると気持ちや言葉は柔らかさを失います。全部、愛から生まれているにも関わらず、怒ってしまったり、イラついてしまったり、私も何度、子どもの寝顔に向かって反省の夜を過ごしたかわかりません。

子育てって、「こうすれば、こうなる!!」っていう絶対的答えがないから、人は不安になるんでしょうね。
・真っ直ぐの線を引きたかったら定規を使おう!とか、
・一時間働いたら1000円もらえる!とか。

行為とその結果が、すぐには見えてこないから何時までも不安。子育てには、絶対がないというのが、この仕事の難しさ・はがゆさだと思います。

ひとつ楽になったと思ったら、また次に新たな不安がやってきます。

夜泣きがおさまってきたとホッと安心したところに、人見知りが始まったり、離乳食が軌道に乗った頃には、物を投げるブームの到来。せっかく時間をかけて作った離乳食が宙に舞う…床に落ちる…挙句の果てにはご飯が足りないと泣き喚く…。泣きたいのは私の方よ…とトイレに向かうと後追いが始まった子どもがドアの向こうで激しく怒号のような泣き声をあげている。ご近所さんに心配されてしまうから、結局トイレのドアを開けっ放しにして用を足す。一息もつけない。

ママ業が休憩するのは一体いつなんでしょう。終わりのないループのようで不安は更に募ります。

私がそんなループに陥っていたとき、保育園の園長先生がこんなことを教えてくれました。

ーー子育てって、良いときもあれば悪いときもある。辛い時期を乗り切って、ホッと一息優しい時間。でもまたすぐに手ごわい辛さがやってくる。日向と日陰を行ったり来たり。

でもね、お母さん。良いとき悪いとき行きつ戻りつしながらも、それは前の悪いときが戻ってきたわけではないのよ。良いとき悪いときを繰り返しながら、着実に階段を昇っているの。ちゃんと成長してる。まるで螺旋階段ね。よ~く見てみて。前の辛かったときとは全く種類が違うはず。良いも悪いも、どんな経験も、成長に繋がってるよ。ーー

ヨーガの経典である「バガヴァッド・ギーター」にこんな節があります。

あなたの職務は行為そのものにある。決してその結果にはない。行為の結果を動機としてはいけない。また無為に執着してはならぬ。 
バガヴァッド・ギーター第2章47節

執着を捨て、成功と不成功を平等(同一)のものと見て、ヨーガに立脚して諸々の行為をせよ。ヨーガは平等の境地であると言われる。
バガヴァッド・ギーター第2章48節


園長先生の言葉そのものだと思いました。

私たちお母さんの職務は、結果を出すことにはない。ただ、いい時も悪い時も、ただ自分のまんまに子どもと共に生きることにある。辛い時期、穏やかな日々に憧れていると、より今がしんどくなります。今、辛い時期にあるお母さん方に、先輩ママさんが、「直に終わるわよ!」って勇気をくれます。

明けない夜はない。俯瞰する力。誰かの言葉が、きっかけをくれる。

ある日。子どもへの接し方について煮詰まっていた私に、主人がこんなことを言いました。
「どんな子に育ってほしい?」
私は、
「ただただ優しい子に育ってくれればいい。」と答えました。
すると主人が、
「じゃあ、ただただ優しくするしかないんじゃないの?」
と声をかけてくれました。

あぁ、私ったら、自分が出来ていないことを子どもにさせようとしていたわ。本当だ。ただただ、愛を伝えよう・・・と思えた瞬間でした。
「こんなときにはこうしましょう!」「あんなときにはあぁしましょう!」
そんなテクニック、子どもに教え込んでどうするつもりだったんでしょうね。
力が抜けて、シンプルに考えられるようになりました。

感情に巻き込まれてしまったときは、やっぱり自分自身に問いかけてみて。
本当のあなたは今、何を感じていますか?・・・結局、ヨーガ本来の教えに導かれてしまいます。

子どもだけが育っていくんじゃない。私たちは、いつも、共に育ち合っています。
一緒に階段を登っている今日を、味わって生きましょうね。

お母さん、今日もありがとう。

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文 ヨガインストラクター ミヅホ/編集 七戸 綾子