子育てに行き詰ったとき、時として人生の先輩方の言葉がたくさんの勇気と智慧を授けてくれます。今日はそんな先輩方のお話をしたいと思います。

ある時、すごく人気がある小児科のおばあちゃん先生のお話を聞く機会がありました。

「私は3人の子どもたちを育てました。もう彼らも成人し、自立しています。私の元にはおりません。私のクリニックには毎日200~300人近い子どもたちが来院します。私は子どもが大好きです。私は優しい先生として有名なつもりですが(笑)、検査を受ける子どもたち、予防接種の注射を受ける子どもたち。その誰一人として私にぎゅう~っとしがみつく子はいません。

今、子育てが大変で大変で泣きたくなる方いっぱいいると思います。もう抱っこなんて嫌って思う人もいるかもしれない。でも、人生のほんの一瞬です。子どもに関われるのって、人生のほんの一瞬。

私の3人の子が、私にしがみついてくることはもうありません。私は毎日300人もの子どもたちに出会うのに、その子がしがみつくのは私ではなく、お母さんです。あなたです。

だから、お母さん方、どうぞ今しかないこの子を惜しみなく抱きしめてください。」

ちょうど体力的に子育てに疲れていた頃に聞いた私は、ひざの上に座る我が子を熱い思いで抱きしめました。

もうひとつのお話は、二人目を出産した助産院の先生のお話です。助産院は、出産した次の日には自宅に帰らせてもらえるんです。家族の中にいることが一番自然なことだからと。

誕生から3日目。へその緒が取れました。ちょうどその日に健診に訪問してくださった先生が大事にそのへその緒をガーゼに包み箱に入れ、私に手渡しながら、こう言いました。

「さぁ、神様がこの方を、あなたにお預けになります。」

その日、二回目の出産をしたような気になりました。神様の世界から、この子は私たち家族の中にやってきた・・・。それはそれは大きな感動と共に、とてつもなく深い責任を感じた瞬間でした。大事にこの命をお預かりしよう。「赤子は世界の宝」と言いますが、そんな宝物を育てる機会を与えられたんだ・・・と何ともいえない思いがしました。単なる感動という言葉では言い表せない、ご神事に与かるような荘厳な気持ちがしました。

2年後、二人目がおっぱいを卒業するときにも、先生から、人生に勇気を与える素晴らしい言葉をいただきました。

「ありがとう。ありがとう。ありがとうね、おっぱいさん。素晴らしいおっぱいをたくさんありがとう。」

そう言いながら卒乳後、固まってしまった私のおっぱいを大事に大事にマッサージしてくれる先生。「80年分の基礎をふたつ作ってくれたおっぱいさんだもの。」と言って、まるで神様に捧げ物でもするかのように私の体を慈しんでくれました。

80年分の基礎?あぁ、お姉ちゃん80歳、妹80歳、その「基礎」ということか・・・と気づいたとき、あぁ、この子達が80歳まで生きていくかも知れない、その基礎となる時間を過ごしてきたんだな~と改めて命の軌跡を振り返りました。そしてちゃんと関わってあげれるのは、そのたった4分の1ほどの時間なんだな~。何を渡せるのかしら・・・。

マッサージ中はとても荘厳で、涙が溢れて仕方ありませんでした。与えられた命をお互いにすり合わせながら、「生きて」きたんだ、「生きて」いくんだ、これはやはり、ご神事なんだ!という気持ちになりました。

この子育てコラムを書かせていただいて、ちょうど1年が経ちました。
「命を生きるということ ~ ヨガ ~」というタイトルで書きたいと思っていました。それは、ヨガの教えに則って、自分自身のダルマに気づいていくことを生活のなかで見出していきたかったからです。ダルマとは、法です。義務・運命・すべきこと・あり方。

みんながこうするから…、こういうもんだと決まっているから…、あなたはこういう子だよねって誰かに言われたから…、ではなく、なぜ生まれたんだっけ?どうしたいんだっけ?に正直に向き合いながら、そんな自分を上手くこの世界に表現・発信するための智慧を学びながら、「私」という「命を生きる」。

命が宿る、宿す、消える、育つ。

色々あるけれど、「生きる」ということ自体が「ご神事」なんです。

必要があって、この世に命が預けられました。その命を大事に生きていきましょうね。

また、そんな新しい命は、あなたの元に預けられました。もの凄い確率で、あなたの元にやってきました。あなたの命は、今日をどう生きていますか。

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文 ヨガインストラクター ミヅホ/編集 七戸 綾子