ご縁で結ばれた、神秘の和の香り 1/2
まに・まに
自分なりに尽くしながら、流れのままに
天然香料の繊細な香りに惹かれて
「まに・まに」のお香は、淡路島で作られています。淡路島ではお線香が特産となっており、全国生産の約70%のシェアを占めています。そんな淡路島で、嘉永時代から先祖代々と香づくりが受け継がれ、自然由来の素材を大切に守り続けている香司(香の調合師)に出逢いました。
私は、毎日起きて、掃除した後に、神仏に、そして、先祖に、香を捧げています。昔は、インドの香を使っていたのですが、少し匂いが強く感じていました。インドでは、香は、外で使われることが多いので、強度の為、真ん中に竹串が使われています。その竹串の燃える匂いを消す為にも、匂いが強いのです。
香は、植物がもたらす希少な宝物です。天然香料の香を、石巻の被災地にも、献香したことがありますが、本来、香は、神さまにも、捧げる方にも、心身の健やかさを導くのが、役割なのです。
元々、スタイリストであった私は、日本にて洗練された和文化の美しい宝物である香を、日本、そして海外の方にも感動を与える宝物として、表現したいと考えるようになりました。
様々なお香を求め歩くうちに、淡路島の香司(香りの調合師)の存在を知りました。そして、想いに突き動かされて、淡路島へ工場見学に赴いたのです。その際、工場見学の前に、土地の神様へのご挨拶にと神社に立ち寄ったのですが、同行した友人のご縁から、神社の宮司さんとお話しする機会に恵まれて、天然香料のお香を求めて淡路島を訪れたことを伝えると、訪ねる先の香司さんを紹介いただき、直接、お逢いしたかった香司さんとお話しする機会を得ました。
私は、「香が本来持つ薬効とともに、香の文化を、いま社会の中枢で働いているひとたちに届けたいと想うようになり、淡路島を訪れました。美しいパッケージに仕上げて、振り向いてもらいたいと思っています。」と思いを伝えました。香司さんは、「すべては想いからはじまるからね。」と、全面的な協力を申し出てくださいました。
恋するような香への“想い”から、するするとご縁が繋がったのです。この初めての淡路島の旅で、伝統の職人の技、更にお香の歴史を学び、香司さんの代々受け継がれた香への熱い想いに触れました。まるで、何かに突き動かされてるようでした。
仏道、神事から、香道、日常の愉しみへと発展した香の歴史
香のルーツは紀元前3000年とも、ずっとそれより以前云われています。エジプト、インドと伝来しながら、その香りの美しさと薬効は、神事には欠かせないものでした。
日本の香の歴史は、日本書紀によると、推古3年(595年)に淡路島に香木が漂着したのが始まりと記されています。聖徳太子の時代に、古代エジプト、インドで、神に捧げられてきた香木が、日本に伝わりました。燃やすことで、神秘の香りを放つ香は、悩ましい心も、燃やし尽くすことで、神秘に辿りつく仏道とも相成り、仏事で大切に扱われます。
この写真は、流れ着いた香木をご神体として祀っている枯木神社。海辺にある、小さいけれど心地よい神社です。
着物に香を焚きしめて、魅力を高めるアイテムとしても用いられ、江戸時代には、庶民にも幅広く愛用されるようになりました。
近年、天然香料の香の美しさと、効能が見直されています。消臭や、カビの防止力も、注目されています。
ご縁がつながり、「まに・まに」が完成する
香司とは、香の調合から仕上げまで、香造りの全ての責任を担う方のことを指します。まさに、香を司る方です。「まに・まに」の香は、淡路島の香づくりに最適な気候で育まれます。漢方成分に準ずる植物の力が濃縮された香は、空間と心身を包みます。受け継がれた匠の技は、使いつづけるほどその力を発揮するようです。「まに・まに」で製品化する香り選びでは、香木本来の香りを楽しめることや、薬効、上質で神秘な香りを重視しました。商品に添えた香立ても、シンプルで美しく使いやすいものを造りました。
以前は、漆を塗って作られていた漆紙は、かぶれてしまう問題がありましたが、現在は、本漆ではなく「カシュー」(あのカシューナッツの木からとれた樹脂)や「アルキット樹脂」という塗料を使用しているそうです。私は、香への想いから、香を納める「宝箱」を探し、漆箱の美しさに惹かれて、訪ねてきた旨を伝えました。漆箱屋のご主人は、漆箱に興味を持ってくれたことを喜んでくださり、快く協力しますよ、とおっしゃっていただきました。
想いからのご縁は、ここでも繋がり、「まに・まに」の漆箱へとかたちにすることができました。
香に惹かれる中で、友人を通じて新鋭の画家である濱口麻里奈さんと出逢います。作品を見て、彼女の持つ独特の生命の世界観に魅了されて、イラストやロゴなどを依頼させていただきました。彼女も、「まに・まに」の為に尽力してくださいました。「まに・まに」のホームページの製作も彼女の作品です。ファンでもある私には、光栄すぎることです。
商品化で目指したのは、日本の和のアイテムを、和を超えた世界観での表現です。添えられた栞にも、ホームページでも、Englishでの表記も加えています。友人が、心を込めて訳してくれました。たくさんのご縁の流れから、実に2年の月日を経て、3年目の2018年に、「まに・まに」の香が産まれました。
それは、まるで、恋をして、子供ができるのと同じような流れでした。
ブランド名の「まに・まに」に想いを込めて
「まに・まに」というブランドネームには、あなたの願いが叶いますように、そんな想いが秘められています。
日本の古文には、随に随に(まにまに)という言葉があります。流れのままに、という意味ですが、ただ流されるのとは違います。自分なりに尽くしながら、流れのままにあるという意味だと、理解しています。私は、そんな風に今に尽くして、今を受けとめて生きていきたいのです。
そして、サンスクリット語では、マニ(摩尼)には、宝珠(ほうじゅ)の意味があります。神社では、あちこちにマニ宝珠(または、如意宝珠という。)のモチーフを見ることができます。宝珠とは、災難を除き、濁水を清くするといわれ、思い通りになる珠のこと、とも云われています。つまり、想いを叶えるのが、宝珠です。
私は、2016年の夏に、摩尼=宝とは何か? とい問いを持って旅に出ました。そのとき訪れた奈良の室生寺は、弘法大師(空海)が、マニ宝珠を隠したと云われる場所です。山深いお寺のご本尊は、香木で造られたものでした。
偶然にも、香を大切になさっているご住職の、とても素敵な笑顔と香りに迎えられました。
摩尼山で過ごしながら、マニ(摩尼)=宝とは、なんだろうなぁと、しみじみと考えました。そして、ご縁だなぁと思ったのです。人も、出来事も、自然も、ご縁の織りなす今を大切にしたいと思いました。ご縁には、別れもあり、時には切ない想いも伴いますが、それでも、それも含めてマニ(摩尼)=宝だと思います。
私にとって、マニ(摩尼)とは、とても大切な言葉になりました。「まに・まに」のブランドロゴなどにも、マニ(摩尼)のモチーフをちりばめてます。「まに・まに」は、みんなのご縁と幸せを、香で応援します。
私は、ヨガの指導も、クリスタルボウル奏者としても、「まに・まに」のお香でも、瞑想的な心の落ち着きと、穏やかさを過ごす時間を大切に伝えたいという想いがあります。落ち着いた、穏やかな心から、それぞれの持つ力を充分に発揮できると考えるからです。落ち着いた、穏やかな心から、マニ(摩尼)=宝が現れると思うのです。
「まに・まに」の4種類のお香の商品名は、私の尊敬する白隠禅師の禅語で表現しました。禅の健康書として知られる「夜船閑話」を記された方で、江戸時代のたくさんの方の心身の健やかさの為に尽くされました。
●禅 Zen
「禅とは、心の名なり」という言葉があります。この香には、移り変わる心に、柔らかな香りやスパイシーな香りの刺激が、悩ましい心を愛しむ力へと変えるよう、祈りを込めています。
●壽 Jyu
白隠禅師のこの言葉は、喜びを以ての生き方を示唆します。健康で、生きがいを持ち、穏やかな<壽>の境地で、微笑みから人生を全うすることを願い、たくさんの方に、書き与えていたようです。壽で使われる、沈香は、年月が経つほどによい香りを放つとされます。それは、人生を壽で全うして、歳を重ねることが、人としての美しさに貢献することのようです。
●慈 Ji
全てに慈しみを持つこと、差別なく全てを我が子だと思って尽くすことの大事さを、白隠禅師は説きます。そうすれば、互いに心も和らぎ、争いもなくなると伝えます。そして、忘れてしまうと、人の道から外れてしまうとも言ったそうです。柔らかな心へ導けるよう、本能的な情動に働きかける香を選んでいます。
●尊 Son
何を尊いと思うか? 白隠禅師は、毎日の尊さに気づき、尽くして生きなさいと説きます。尊の香は、香りも煙も控えたお香です。しかし、消臭、殺菌と空間を浄化のパワーを放ちます。そこには、職人たちの叡知が秘められています。原料となる、紀州備長炭木酢液は、原木の伐採から、釜での作業までも、手間と時間をかけた過程を経て作られます。備長炭を焼く過程でできる煙を冷やしてできたのが、木酢液です。たくさんの尊い時間と職人の技から生まれる自然の叡知が、尊の名に値すると思い、名づけました。
後編:~香を選び、捧げる時間を美しく~につづく
お話し ヨガインストラクター リー/編集 七戸 綾子