アメリカ合衆国を代表する川と言えば、ミシシッピ川。五大湖にほど近いミネソタ州に端を発し、北米大陸を悠々と縦断して、その豊かな水をメキシコ湾に注いでいます。その長さは、実に世界第5位、ナイル川、アマゾン川とともに世界三大河川に数えられています。

さてミシシッピ川の綴りは? 答えは、Mississippi。英語を習い始めた時に、一生懸命に覚えた人も少なくないでしょう。では、その意味は? ネイティブアメリカンの言葉で「大きな川」。何ともストレートなネーミングですが、実際にその雄大な姿を目にすれば、うむうむと納得するはずです。

このミシシッピ川ですが、地勢的にアメリカにとって重要なだけでなく、歴史や文化においても切っても切れない存在なのです。ミシシッピ川は「アメリカを生んだ川」と言われています。鉄道が通るまでは水運の要として、アメリカの近代産業を育んできました。流域には多くの人や冨が集まり、大きな街ができました。経済ばかりではありません。人の交流を通して、音楽や文学などの文化も花開きました。アメリカの“母”と言っても、決して大げさではないでしょう。

いつの時代も、 “始まり”に人間は興味があるもの。1832年、探検家ヘンリー・スクールクラフトは、ミシシッピ川の源流を突き止めました。広大な水を抱くアイタスカ湖からこぼれ落ちる雫のような清流が、そのヘッドウォターズ(水源)でした。冒険家が原野をかきわけて見つけたヘッドウォーターズですが、今ではドライブとハイキングで手軽にアクセスできます。源の川幅はわずか十数メートルほど、川面には大きな丸い石が幾つも顔を出しています。この石の上をとーんとんと飛び歩いて行けば、簡単に向こう岸に渡ることができます。自分の足でミシシッピ川を渡れるとあって、観光客にも大人気。緑豊かな州立公園の中には、ハイキングコースやキャンプサイトもあり、ヴァケーションにぴったり。子どもはもちろん、大人もお年寄りも、笑顔でとーんとんと飛び歩いている姿は実にほほえましいもの。

石の間から流れ出る清流を眺めながら、生まれたばかりの大河が大海に行き着くまでの旅に思いをめぐらせてみては? 

写真&文 美濃部 孝