日常の道、旅先での道、思い出の道。道は人生の軌跡でもあり、未来でもある。
時に振り返ったり、立ち止まったり。だけど必ずどこかに続いているもの。
道で出合ったもの、道で思ったこと。ここにあるのは、それぞれにとっての大切な「道」。

「プロスペクトパークの小径」上野 朝子 / インテリアプロデューサー・コラムニスト

この道は、近所にあるプロスペクトパークの小径。この先には、思わず両手を広げて深呼吸したくなるような、大きなフィールドが広がっている。
以前暮らしていた茅ヶ崎では、浜辺につながる小径が好きなシーンだった。山より海が今でも好きだけれど、この小径は、目を瞑ると、その海へと続く小径と同じ感じがする。それもあって、好きなのかもしれません。

「道で出逢う命のこと」江口 視智代 / 地域猫活動ボランティア

18歳の時に、道でひっくり返っているセミがいた。起こそうと思ったけれど、人に見られるのが恥ずかしくて。しばらくすると「グシャッ」と音がし、車が通りすぎた。私が躊躇したばかりに、そのセミは車にひかれたのだ。あの音が、何十年経っても頭から離れなかった。「助けようと思った命は、その時助けないと間に合わない」。私が治療をしたり、自宅で見送ったりした猫は、外猫の中でもほんの一握りの猫でしょう。でも、きっとそれも意味があって出逢っているのだと。

「U.S.ハイウェイ163」武田 一 / 高校教師・「ジーニアス英単語集」著者

ナバホの大地に沈む夕陽を見せたくて…娘を後ろに乗せて旅に出た。
Enough dreaming. It’s time to ride.同じ風を感じながら…同じ雲を追いかけて…同じ夕陽を見つめている。「パパ…ここは大地も赤く輝くんだね」そういう娘の瞳も輝いていた。

「百年市場の道」水鳥 雅文 / アートディレクター

古い施設が今も息づいている百年市場。この市場を通るたびに、バンコクに移住した初心を思い出す。色とりどりの野菜、道を横切る猫、笑顔で溢れる食堂。今と昔が混在する場所。生活や人の息づかいが「真ん中」であることが当たり前だということを、はっと気付かされる。いつでも感謝の気持ちを持ちながら先へ進んで行きたい。

編集 横山 直美