貧乏人のOO、というのは世界中色々あって、イタリアで貧乏人のパスタと言えば、半熟の目玉焼きとチーズが乗ったパスタを指す。作ってみたことがあるが、ひもじさすらなく、これは間違いなくおいしい料理。他にも、古くからパン粉をチーズの代用とし、貧乏人のチーズと言われていたり、フランスの茄子のパテは貧乏人のキャビアと呼ばれている。

「貧乏人の鯛飯」は、そのままの意味合いだが、安い材料でおいしく出来る炊き込みご飯なので、わたしが勝手にそう呼んでいる。鯛の頭は魚屋やスーパーでたいていは売っているし、何しろ安いのが嬉しい。うろこや骨は多いが、うまみのあるいい出汁が出る。

厚手の鍋や土鍋に白米2カップ(400cc)、同量の水、塩は小さじ1杯、酒大さじ1杯。鯛の頭は、大きい物なら半身、小さい物なら頭一匹分に熱湯をかけてから冷水に取り、うろこや血合いを取り除き鍋へ。蓋をし火にかけ、沸騰したら弱火で10分炊く。(炊飯器の場合はそれぞれの時間で。)今回はタイムの枝を一緒に炊いた。炊き込むなら月桂樹の葉やしょうがもいい。やってみたことはないが、グリーンピースなんかもイケるんじゃないかと思う。

炊きあがったら鯛をバットや皿に移し、骨や目を取り除く。身の部分を鍋に戻し、混ぜる。今回はハーブを一緒に炊き込んだので、オリーブオイルも適量ふりかけ、よそってから黒こしょうをひいた。もちろん、何もしないでもいい。細いねぎを刻んだ物や細かく切った青じそ、この季節なら木の芽をふっても。もはや「貧乏人の」と付ける必要も無くなっている?

写真&文 中村 宏子