栗の季節がやってきた。ぷっくりとつやつやな栗が店頭に並んでいるのを見たら、買わずにはいられない。そうして買って帰ってから、これから始まる栗仕事の手間を思って軽く後悔する。まずは栗ごはんを作ろうと意気込んで、頑丈な鬼皮を10こも剥けば、残りは皮ごとゆでてしまおうか、なんて弱気になる。

それでもがんばって全ての鬼皮を剥き終わると、今度は渋皮剥きが待っている。渋皮のシワは思っているより深くて、なるべく薄く削ごうとするとまだらに残ってしまう。もったいないという気持ちが邪魔して、なかなか厚めに削げないのだ。結局時間ばかりかかってしまうので、最初から涙をのんで(?)厚めに剥く事をオススメする。

とは言うものの、渋皮剥きも2割程度で断念し、2合分の栗ごはんにしかならなかった。残りは渋皮煮にする。栗が浸かる程度の水と重曹を少々加え、一晩置く。翌日、浸けた水ごと火にかけ、10分ほど煮る。びっくりするくらい黒い煮汁になる。煮汁を捨て、きれいな水の中で黒い筋を取り除く。鍋に栗とかぶるほどの水を入れ火にかけ、沸騰してから5分ほど煮て茹でこぼす、という作業を3〜4回くり返す。黒い筋や毛羽があればその都度取り除く。

鍋をきれいに洗い、栗とひたひたの水(量っておく)、その水の60%の砂糖を入れてクッキングシートで落とし蓋をし、弱火で15分ほど煮る。この時にラム酒やバニラのさや(バニラビーンズをこそげたさやで十分)を加えれば、より香り高くなる。そのまま冷まし、保存瓶や密閉容器に入れ冷蔵庫で保存する。冷蔵では条件が良くて2週間ほどしか保たないので、長期保存したい場合には小分けにして冷凍する。

出来上がった渋皮煮はそのまま黒文字の楊枝でも添えれば立派なお茶菓子に。ペーストにしてバニラアイスに添えたり、ケーキにしたり。先日、子供たちの集まる持ち寄り会に栗の入ったシフォンケーキを持参したら、小学生男子たちの反応の鈍かったこと!栗が特別な存在なのは大人だけ?

写真&文 中村 宏子