フランス菓子にはまったく疎いのだが、このファーブルトンを初めて食べた時、なんて日本人好みなんだろうと思った。もっちりとして甘さは控えめ、塩が隠し味なところがそう思わせたのかもしれない。レシピも色々で、生クリームやバター、バニラビーンズが入るレシピもあるが、牛乳だけであっさりしたタイプのものを紹介する。

ボウルに卵2こと好みの砂糖50gを入れ、泡立器でよく混ぜる(泡立てる必要は無い)。ここへふるった中力粉(いわゆる地粉やうどん粉と呼ばれるもの。薄力粉と強力粉を半々に混ぜて使っても)80gと塩ふたつまみを加え、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。更に牛乳400ccを少しずつ加えて伸ばす。16×21cmくらいのバットにオーブンペーパーを敷き、生地を流し入れる。このままクレープが焼けそうなほどゆるい生地だ。ここへ好みの具材を入れる。

具材の基本はドライプルーンだが、今回はプルーンと、フライパンでキャラメリゼしたりんごも入れた。りんごのキャラメリゼは、フライパンに砂糖大さじ1を入れて火にかけ、焦げ色がついて来たら、皮を剥き厚めのいちょう切りにしたりんご1個分を入れてしんなりするまでソテーする。他には金柑のはちみつ煮(vol.44『金色の蜜柑、金柑』参照)や柑橘類のマーマレードを入れてもおいしい。

180℃に温めたオーブンに入れ、50分ほど焼く。サラサラだった生地が膨らみ、全体的においしそうな焼き色になったら出来上がり。冷めると外側がしぼみシュークリームの皮のようになり、中のもっちり感との食感の対比が面白い。本来は陶製の耐熱皿に有塩バターを塗り、砂糖をまぶしたところに生地を流し込む。そうすると底がキャラメル状になり、食感も風味も更に楽しくなる。プリン型やココット型などで、小さく焼くのもいい。仕上げに粉糖を振ったら、もうそれらしくなっている。

写真&文 中村 宏子