――ヨガを習いに行ったきっかけは何ですか?
チエ 私は片頭痛持ちで、よく体調を崩していました。調子が悪い日が続いていたときに、主人が、スタジオ・ヨギーでヨガができるよ、と教えてくれて、あ、じゃあやろう、と思ったんですね。それからです。56歳でしたね。クラスに通うより先に、ヨガのトレーニングからはじめたんです。
その前にもどちらかというと、エクササイズ的なヨガはやっていました。シンガポールにいたとき、インド人の先生の愛のヨガ(バクティヨガ)的なものを習っていました。体を動かしたあと、最後みんなで輪になって、笑いましょう、歌をうたいましょう、というもの。でもそれは自分のイメージしたヨガとは違っていたから、物足りないような気がしていました。その頃はまだ、世界でも、日本でも、シンガポールでもヨガは今ほどさかんじゃなかったんです。

ビートルズからヨガは流行ったけれど、それはアメリカに限られていたと思います。(※1960年代、インドのリシケシに、ビートルズは訪れ修行していたそうです)そんな話をすると、「先生、ビートルズの頃からヨガやってたんですか?」とよく言われるの(笑)。ビートルズが来日したころは、高校1年生か中3くらいだったかしら。

淡々と受け入れるのが一番いい

――ご夫婦やパートナーが長続きするコツってなんですか?
チエ むずかしいわねー。たぶん自分が相手のことを嫌だと思っているときは、相手も自分のことを嫌だと思っている。嫌いだなと思うと、その人も自分のことを嫌うようになる。でも、その人のことを好きと思うと、だんだん相手も変わってくる、ということあると思うんです。たぶん、体全体から、そういうエネルギーが伝わっていくのでしょう。そういうマイナスな気分を出すと、どんどんそういう方向にいってしまう。仕事でもうまくいかないな、と思ってぐちぐち言ったりしていると、その方向にいっちゃうんだと思う。だから淡々と受け入れるのが一番いいと思います。無関心というのとはまた違います。瞑想につながると思いますが、ただ起こることをみていくこと。淡々とやったほうが、自分がラクに過ごせる。ぶつかったほうがいい場合もあるのかもしれないけど、それはわからないですね。

それと、私は愚痴を言わないようにしています。自分ではためてるとは思わないけれど、子どもには「そんなためないでパパにもっと言ったほうがいいよ」と言われたりしました。でも、どちらかというと思っている事はすぐ言ってしまいます。自分の考えと違うことを言われて、あなたの言うこともっともねー、とは言わないです。心の中で違うことを思って、表面的にうまくやるのはあんまり好きじゃないです。嫌なことがあって、考えてどうにかなることなら考えるけど、どうしようもないときはすぐ寝ちゃうんです。(笑)あっさりしすぎ、と言われることはよくありますね。

――お子さんとの間ではどんな感じでした?
チエ 子育ては、今までの人生で一番楽しくもあり、一番大変でもありました。子どもに対して、どうしても自分の夢や、自分の考えを押し付けてしまいがちでした。ですが、そうそう自分の思う様にいくとは限りませんでした。子どもとの間の色々な葛藤を通して、今まで植えつけられてきた常識や価値観を変えざるを得ないこともしばしば。子どもが私に人間を観る目を深め、私を成長させてくれたと思っています。

後編へつづく

写真・文 Art of living magazine 編集部