体を重ねると、心も重なる
vol.8
「人とつながり、ふれあうことが、とにかくおもしろい」と、ダンサーの近藤良平さんは言う。「だから、人といつもポジティブに関わっていたい。それは、仲良くなりたいから好意的な態度をとる、ということではなく、人とつながるためには自分が積極的であることが必要だと思います」
近藤さんは、一人ひとりの体が持つ楽しさを伝えるため、プロのダンサーからダンス未経験者まで幅広い層を対象にしたワークショップも行っている。「僕自身ペアワークが大好きで、ワークショップでは、人とつながり、ふれあうことのおもしろさを感じられるようなペアワークもよくやるんです」
たとえば、背中合わせに座った状態から、お互いに背中を押しながら立つという、子どもの頃の遊びのようなワーク。「二人が平等な力で押し合えば簡単に立てますが、どちらかの力が強すぎたり、弱すぎたりすると、立てませんよね。そうやってワークをしていると、相手がやさしい人なのか、ちょっと乱暴な人なのか、ということが体を通して分かってくるんです」
ペアワークのコツは、「相手を信頼すること」だそうだ。「相手が背中の力を抜いてしまったら……などと考えると、一緒に体を動かせません。つまり、相手を信頼せざるをえない。信頼しながら、相手の動きをイメージすると、ワークが上手くいくはずです。とはいっても、相性のいい人もいれば、そうでない人もいる。それは、こんなに人間がいるんだから、あたりまえのことですよね。だから、できなくてがっかりするのではなくて、こういう人もいるということが、分かるだけでいいんだと思います」
それでは、実際に体を動かして、人とのコミュニケーションを楽しんでみよう!
まずは、かんたんな手遊びから。向かい合わせに座り、ひとりが手の甲を差し出し、もうひとりがその上に手のひらをのせる。そして、手の甲を差し出した人が、手を右や左へあらゆる方向に動かし、手のひらをのせている人はその動きについていくようにする。どうだろう? 相手の動きについていけただろうか? 次に、目をとじてやってみよう。すると、どうなるだろうか?
「おもしろいでしょ。最初は『ついていかなきゃ』と思って、肩やひじが緊張して、体が上手く動かない。でも、目をとじた瞬間に体があきらめちゃうので力がゆるんで、動きについていけるようになるんです」
次に、背中と背中を重ねるワークをやってみよう。まず二人ともうつぶせになり、横にぴたっと並ぶ。そして少しの間、ほおづえをついておしゃべりをしてみよう。すると、急に仲良しになったような気がして、とても楽しくなってくる。それから、なるべく手を使わないようにして、ひとりがもうひとりの背中にゴロンと上がり、背中、おしり、ふくらはぎ、かかとのラインをぴったり合わせて、ゆったりと仰向けになる。
「胸が開きますし、ずーっとやっていたいくらい、気持ちがいいです」とは、今回近藤さんのパートナーになってくれた、スタジオ・ヨギーのヨガインストラクター、マリコ先生。「人の体温も感じられるので、心もリラックスできますね」
イラスト 櫻井 乃梨子/写真 野頭 尚子/ 文 小口 梨乃