one life, enjoy a quest of realizing yourself.

 ビジネスの成功のカギは、結局は”だれが”やるのか、ということに尽きると思います。僕が投資をする時に重視することの一つが、その人の「人間力」。
 “one life, enjoy a quest of realizing yourself.”最近、僕が大事だなと思っている言葉です。「一度しかない人生なのだから、個性を生かして思いっきり生きましょう」という意味ですね。「ワンライフ」には「一度の人生」という他に、もう一つの意味があります。“we are all one. ” つまり、自分も周りの人も、動物も植物も、みんな一つなんだということです。そういう二つの意味を込めて「ワンライフ」と表現しています。
 これからの時代、本当に活躍する人物というのは、このワンライフという言葉に込められた二つの意味を同時に目指す人だと思っています。“個”と“全体”、一見この二つは完全に相反するように感じられますが、そうではありません。これからの時代には、とても大切なカギとなっていくでしょう
 一度しかない人生だから、自分の個性を生かすことと同時に、自分の周りの人や植物も自然も宇宙も一つであり自分もその世界の一部なんですよ、と認識すること。今、社会をよりよくするために個性を発揮している人たちは、そのような「人間力」を持っています。

ジーンとソーシャルスタンダード

 通常多くの人は自分の人生を生きているように見えて、ほとんどが“ジーン(遺伝子)”と“ソーシャルスタンダード(社会的基準)”にコントロールされてしまっています。遺伝子つまり本能レベルの食欲や性欲で行動をする。そして金持ちになりたいとか出世したいとか、社会的な欲求を満たそうとする。つまりこの二つに支配されていて、本当の意味で自分の人生を生きることをしていません。それらにとらわれず、本当の自分の人生をみんな歩んでいけたら素晴らしいだろうと思います。みんな遺伝子と社会的基準に影響されない本当の自分自身を絶対持っているはずなんです。絶対的な“善”と重なるように個性を思い切り発揮したら、自分も幸せになれるし社会もよくなると思います。しかし、現実問題として、なかなかそういう風に生きられる人は少ない。
 その点、何らかの苦労をした人やマイノリティの人は、自分の個性を発揮して生きている方が多いですよね。例えばLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどの性的少数者)の人は、幼少時から悩みを抱えている。しかし、いったん周りにカミングアウトすることでソーシャルスタンダードからは解放されるので、自分をストレートに表現することができるのです。多くの人々はソーシャルスタンダードにとらわれ、無意識のうちにいろんなこと我慢してしまい、自分の個性を生かさない人生を送ってしまっています。
 以前、本誌のインタビュー記事にも登場したボリス・ディトリッヒさんが言っていました。自分がゲイであるとカミングアウトした時に、親がすごく嘆いて泣いたと。その時、自分の弱みを強みに変えていこうと思ったと。そういう人は強いですよね。会社の人にどう思われるだろうかとか、社会にどう思われるかなんて怖くないですから。多くの人は目に見えない社会の基準の“檻”の中で生きているのかもしれません。
 歌手のレディ・ガガは人間力を兼ね備えている好例だと思います。彼女は自分がバイセクシュアルであることを公言しています。社会の基準に自分を合わせようとしないから、一見、格好も行動もハチャメチャです。ですが、マイノリティの人にすごく理解があって、社会をよりよい場所にしたいという気持ちがすごく伝わってくる。だから、彼女は素晴らしいリーダーになっていると思います。僕はそういう「人間力」がある人たちにひかれますし、応援や投資をしていきたいと考えています。

語り 谷家 衛 /イラスト 山﨑 美帆 /構成 サンオープロダクションズ