春・夏・秋・冬…日本は四季が豊かですが、ここにもう一つ、梅雨という雨期が40日近くあるので、実は全部で5つの季節があるとも言われています。

食養生にも中国古代の哲学思想「陰陽五行」が取り入れられていて、自然界の現象を五つに分類し、その5種類の間で、促進したり、抑制したり、お互いに関連している関係と考えられています。ここにも、季節が5つあり、「長夏」といわれています。

伝統的な東洋医学に基づく“食養生”(しょくようじょう)を広めている食事療法士の辻野先生にお話をうかがいました。
「長夏は夏の終わりの一か月を主にさしていて『湿』の影響が大きい時期です。
この考えは中国大陸の中原地方での気候条件を前提にしたものであり、日本では梅雨や秋の長雨の時期にあたります。梅雨時期は湿は邪気となり、五行のうちの五臓六腑だと「胃・脾」に負担がかかりやすく、心の状態では「思」と関係が深くなります。脾は胃と一体になって働き飲食物の消化吸収をおこなう機能があり現代医学でいう膵臓(すいぞう)の働きに近いです。

湿邪によって、消化機能が低下しやすく、普段と同じ量でも消化吸収しきれないこともあります。また思いがめぐりやすく悩んだり考えすぎたりしやすくなります。湿邪がひきおこす症状には、頭や体が重く、手足がだるい。関節が痛み腫れる。足のむくみや下痢、胃もたれなどがあります。

対策としては五気の中で「湿」が突出しやすいので、他とのバランスを整える環境づくりが必要です。エアコンの除湿や冷える場合は暖房も適切に使えば有効です。湿った空気を扇風機やサーキュレーターなどの風でめぐらせることも有効です。また汗で濡れた衣類は着たままにしないことも重要です。」

梅雨の時期におすすめの食事はありますか。

「食べ過ぎないことが第一です。次には旬のもの(今住んでいる地域で採れた実野菜など)を食べる。身体を冷やし水分の多い夏野菜を先取りしすぎないよう注意しましょう。」

具体的にはどんな食事がよいのでしょうか?
梅雨(湿邪)対策のメニューをご紹介します。

あわ飯、味噌汁、焼き空豆
3分づき米にもちあわを加え(土鍋で)炊く。焼きおにぎりにしてもよい。
醤油に漬けておいたみょうがをあわ飯にのせる。シソまたは三つ葉などを合わせてを刻んでかける。
旬野菜の味噌汁。
空豆を殻ごと網で焼く。

臓を整える自然な甘味である米をしっかり食べることが主たる目的です。精製された砂糖の甘味は逆にバランスを崩すので控えましょう。みょうがやシソなど香味を活用するとよいでしょう。みょうがは発汗、血液循環促進、消化促進などの作用があり、空豆は胃腸の調子を整え水分代謝もよくしてくれます。
<もちあわは良い甘味で、胃の働きを良くし、口の渇き、小便の出にくい、下痢するものを治す働きがある。>――丹波康頼『医心方』:食養篇を参照

一汁一菜のシンプルな食事をたまにでもできると胃・脾の消化器の負担が減りよいです。消化に負担をかけないようにするためには食べ過ぎない、冷やさないのがよいでしょう。ビールや夏野菜などは身体を冷やすので摂り過ぎに注意しましょう。

そして、ヨガなどをして身体を動かし、気血をめぐらすこともとても大切ですね。気血がめぐれば「水」もめぐります。

季節に合わせた筋膜ストレッチを行っている
<ビューティ・ペルヴィスによる5つ目の季節“梅雨”の快適な過ごし方>につづく

編集 七戸 綾子