ヨガをしているわけじゃないのに、この人の発言や行動は、とてもヨガ的だ、と感じることはありませんか? そんな「ヨガを感じる人」をシリーズでご紹介していきます。ヨガインストラクターのミヤビさんが語ってくれました。

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私は動物園が苦手で、写真で見る野生動物に憧れがありました。人間とは何なのか という疑問を持ち続けていた10代の終わり頃、村上龍さんの『愛と幻想のファシズム』という小説を読み、そこに描かれている狩猟の世界に引き込まれました。

野生動物の気高さ、自然に対する人間の小ささ、射止めた生命を身体に入れ一体となる捕食という行為の意味深さ…。

それから数年後、星野道夫さんの写真と出会います。知人に勧められてはじめに見たのはシロクマの愛くるしい写真で、それも大好きでしたが、さらに心を奪われたのは狩猟の写真と星野道夫さんのこの言葉でした。

生きる者と死す者。有機物と無機物。その境とは一体どこにあるのだろう。目の前のスープをすすれば、極北の森に生きたムースの身体は、ゆっくりと僕の中にしみこんでゆく。その時、僕はムースになる。そして、ムースは人になる。――『イニュニック[生命]』(新潮文庫)より

    

生きるとは何なのか、人間は何故動物と違う形でここに居るのか。新たな思いが湧き立つと同時に、星野さんの目でものが見えたら何か答えが見つかるのではないか、という興奮のようなものを感じたのです。

星野さんの目で見た世界はどれも力強く、そこに自然のエネルギー、宇宙の息遣いを感じました。

人は複雑になりすぎ、その本当の姿を忘れてしまった。野生動物は自然の営み、宇宙の摂理 そのものであり そこから学ぶ事は「自分とは何か」を知る事である、と星野さんの写真を見ていると教えられます。
 
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既成概念に囚われず前に進み続ける探求者たちは、目に見えないものの中に真実を見ながら 目に見える世界で人事を尽くし人間を前に進める事が大切だと知っています。そういう人たちの言動を知ることは、私にとってヨガの聖典を学ぶ事と同じです。

現代は偉大な聖者が次々と亡くなり、神の化身のような偉大な覚者は新しく生まれていない、とインドで聞いたことがありますが、今は際立った1人が神の現れとして生まれるのではなく、神はあらゆる人や物事の中に偏在している、という事が様々な形で表面化してくる、より高度な時代に入っているのではないか、と感じているこの頃です。

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このほかのミヤビさんが教えてくれた「ヨガを感じる人」:
>> ヨガを感じる人 vol.2 自分の生命、身体、自然が先生なんだ――山中伸弥さん
>> ヨガを感じる人 vol.1 物質から人類を解放したい――猪子寿之さん

文 ヨガインストラクター ミヤビ/編集 七戸 綾子