暦の上では立春をむかえる頃ですがまだまだ寒い日が続いています。それでも晴れた日の日差しの明るさは輝きを増し春が近づいているのを感じます。

季節の彩り、移り変わりを五感を通して味わうことができるのは生きる喜びではないでしょうか。

とはいえ、忙しい日々を過ごす中で心と身体のバランスを保つのが難しいこともあります。そこでアーユルヴェーダの春におすすめの暮らしのレシピをご紹介いたします。

春の特徴

冷たく乾いた冬の終わり頃には日差しの明るさ太陽の温かさが徐々にあり、日の入り時間は冬至の頃から30分ほど延びて日中の長さも変わってきます。日差しの温もりを受けて乾いた大地からも草花の芽吹きや木々の蕾もふくらみ、自然界が春の訪れに輝き彩り豊かな季節をむかえます。

人間の体内では、冬の間に蓄積したカパドーシャが春の日差しを受けて溶けだし体内の通路を詰まらせて、心身の重さ、だるさ、ぼんやり、消化力減退、口内のネバネバ感、眠気、鼻詰まり、かゆみなどの不快感が現れます。

春はカパドーシャ増加に注意

カパドーシャは心身をどっしりしっかりと安定させて体力や忍耐力、精神力に影響があります。カパドーシャが正常であれば身体を健康に保つ免疫機能も正常に働き健やかに過ごすことができます。ドーシャは常に変化しているので、春は特にカパドーシャの増加する影響を受けやすくなります。元々カパドーシャが多い傾向の方はより注意が必要です。

春のどんよりなお悩みあれこれのワケ

ずっしり重く、ゆっくり、ネチャネチャとした粘着性、じっとり冷たい・・・これらがカパドーシャの特徴です。

温かくなって、花々が咲いてウキウキワクワク出かけたくなる、何か新しいことを始めたくなる、新生活が始まる・・・なのに動きたくない、やる気が起きない、気持ちが塞いだり沈んだりボーっとしたり・・・

くしゃみ、鼻詰まり、目や鼻、耳のかゆみなど花粉症の症状に悩まされたり、口の中が甘ったるい、ねちゃねちゃする、唾液の分泌が多い、白い舌苔が多い、消化に時間がかかる、お腹が空いた感じがしない、スッキリしない、ずーっと寝ていたい
このようなどんよりした春の症状に悩まされている方はいらっしゃいませんか?

春は軽やかな生活でねっちゃっと重い心身を動かしましょう。

春のおすすめ生活編

・早起き・早寝で生活のリズムを乱さない
・早起きのあとは軽い運動をしましょう(ヨーガ、ウォーキング)
・朝の洗顔時に、タングスレーバーで舌苔を取り除くのもプラス
・シルクの手袋で軽く身体をマッサージ、循環を促しましょう
・動きたくない時こそ予定を入れて出かけましょう
・明るい色や華やかな装いでお洒落を楽しみましょう
・日中は温かくなっていても朝晩は冷えるので冷気にあたらないように注意
・体力は中程度ですから仕事量、運動量はほどほどに
・春らしい明るいスタイルを身の回りにプラス

春のおすすめ食事編

・消化力は中程度なので食事量はちょっと軽めに(いつもより1~2口少なくでも可)
・苦味の野菜(菜の花、蕗の薹などの山菜)、辛味(ショウガ、黒コショウなど)を取り入れる
・熱々のショウガ湯を飲む
・食後にクミンパウダーを白湯と共に飲む
・軽く炒ったクミンシードを白湯に入れるクミン茶も香りよくスッキリします
・湯冷まし(体温程度)に蜂蜜を入れて飲む (注、蜂蜜は非加熱のもの)
・こってり濃厚な味、揚げ物、塩味、酸味を控えめに
・乳製品(チーズ・クリーム・ヨーグルト・アイスクリーム)、甘いもの、油分を控えましょう

消化に軽く、スッキリ排泄を促すレシピ

ムング豆と香味野菜のスープ

ギーのコクと野菜の甘味、クミンシードのスッキリさわやかな香りのスープです。

材料
ムング豆(皮なし2つ割れ)
玉ねぎ、セロリ、人参、カブ、ブロッコリーなど
岩塩、クミンシード、黒コショウ、ギー

作り方
野菜は粗みじん切りに切る

ムング豆は洗って浸水する

鍋を熱しギーを溶かしクミンシード、を入れパチパチとはじけ香が出す

玉ねぎを入れ炒める色が変わった人参→カブ→セロリと炒めてから浸水したムング豆を入れ水を入れて煮込む

岩塩で味付けし最後に黒コショウをふる

ポイント
ムング豆は小粒で消化しやすく、排泄もスムーズに便の量を増やします。セロリなどの香味野菜、クミンシードで爽やかな香りで消化を刺激。ギーとクミンシードでムング豆、野菜類を消化しやすくします。

ムング豆について

あまりなじみがないかもしれませんが、緑豆の皮を取り除き2つ割りにしたものをムング豆、ムングダールといわれています。

緑豆もやしも春雨も緑豆が原料です。ではムング豆と緑豆もやし、春雨も同じなの?と考えやすいですが、加工されているので同じとはいえません。牛乳とヨーグルトは同じじゃないのと一緒ですね。

緑豆は豆類の中でとても小さい豆で、アーユルヴェーダでは消化軽性なムング豆を有益な食品としてすすめています。一般に豆類を食べるとお腹が張りガスがたまりやすいので油分と共に食べることをすすめています。

ご紹介のスープは油分はギー(アーユルヴェーダがすすめる有益なバターオイル)をクミンシードと共に使用して消化しやすく消化経路の閉塞を防いでいます。ムング豆の入手はエスニック食材を扱うお店(アジア・インド系)で探してみて下さい。入手困難な場合は残念ですが豆類でムング豆ほど軽性な豆は他に無いのでムング豆無しで作って下さい。

花粉症でお悩みの方は

カパドーシャの増加、消化力の減退を改善することが必要ですから、上記の生活編、食事編をぜひ試してみて下さい。特に乳製品、甘いもの、スナック菓子、過度な塩味・酸味の摂取を控えることをお勧めします。ヨガで身体を動かしながら自分を冷静に観察しましょう。

ヴァータ、ピッタ、カパのドーシャにはそれぞれ本来の機能があります。カパには心身をしっかりと安定、支え守る素晴らしい働きがあります。春はカパが増加しやすい季節なので、それを和らげバランスを整える方法をご紹介しました。

動かないカパドーシャを動かすのは中々大変気力が必要です。自分で自分を励ましながら出来そうなものから取り入れてみて下さい。そして根気よく続けて下さい。

だんだんとスッキリ軽やかさ、心地よさが現れてやる気が湧いてくるかもしれません。

新しい命の芽吹き、光の春を思いっきり楽しみましょう。

文 アーユルヴェーダ講師 新宅 あきえ/編集 七戸 綾子