運動量が減って、摂取カロリーが増え、ストレスも増えている!
運動の習慣がないわたしもなるほどな、と思ったのが、遺伝子的な体と、現代のライフスタイルが釣り合っていない、という箇所(以下※1)でした。
「人間の体はコンスタントに運動するようにできているが、ではどのくらい運動すればいいのだろう?(中略)
1万年前に農耕が始まるまで、人類は皆、狩猟採集に頼った生活で、食料を探すあいだは体を酷使し、その後数日は体を休めるというサイクルを繰り返していた。」
「現代人の運動量は、石器時代に比べて38%も少ないのだ。それなのにカロリー摂取量は大幅に増えていると言っていい。(中略)旧石器人は、ただ食べるためだけに1日8km~16km歩かなければならなかった。」
となると、万歩計をつけて1日1万歩では甘いのでしょうか、、、。1万歩すら歩けずに、在宅勤務で日々1000歩というときも多い。そして安易に簡単にごはんやおやつを食べています。
「つまり、現代のライフスタイルと、わたしたちの遺伝子は釣り合っていないのだ。」
「ストレスという点から見れば、現代の大いなる矛盾は、苦難が減り、情報だけが増えた、あるいは増えすぎたことかもしれない。さまざまなデジタル媒体によって二四時間途切れることなく悲惨なニュースやうるさい要求が目の前に映し出されるので、偏桃体は休みなく活動する。」
「現代のライフスタイルはストレスだらけ、そして動かない人だらけなのだ。」
運動量が圧倒的に減っている中、摂取カロリーが増え、ストレスも増えている、というのが現代のライフスタイル。
情報に触れることで活動し続けている偏桃体とは、脳内で情動の中枢とも呼ばれ、不安や恐怖といった感情に深くかかわっていると言われています。
以下wikipediaより抜粋です。
「扁桃体は、側頭葉内側の奥に存在する、アーモンド(扁桃)形の神経細胞の集まりで、情動反応の処理と記憶において主要な役割を持つことが示されており、大脳辺縁系の一部であると考えられている。 扁桃体の中心核は、硬直や呼吸と脈拍の増加、ストレスホルモンの放出などの多くの恐怖行動の産生に関係している」
偏桃体が働き続けていることは、ストレスにさらされ続けていると言えそうです。
この、「運動量が圧倒的に減っている中、摂取カロリーが増え、ストレスも増えている」うちの、まずは運動量について、どうしたらよいのでしょう? まさか1日8km歩くのは非現実的です。
「身体活動によるエネルギー消費は、運動によるものと、家事などの日常生活活動が該当する非運動性身体活動によるものの、大きく2つにわけることができます。個人差がありますが標準的な身体活動レベルの人の総エネルギー消費量(24時間相当)のうち、身体活動によって消費するエネルギー量は約30%を占めます。
総エネルギー消費量(24時間相当)は、大きく基礎代謝量(約60%)・食事誘発性熱産生(約10%)・身体活動量(約30%)の3つで構成されています。そのうち、基礎代謝量は体格に依存し、食事誘発性熱産生は食事摂取量に依存するため、個人内での変動はあまり大きくありません。総エネルギー消費量が多いか少ないかは、身体活動量によって決まります。
(中略)
身体活動量は、運動によるものと、家事などの日常生活活動によるものの、大きく2つにわけることができます。身体活動量に占める両者の割合は、運動を習慣的に行っているかどうかによります。ただし運動を習慣的に行っていなくても、畑仕事や家事などによる身体活動が多い場合もありますので、一概に運動を習慣化している人のほうが身体活動量が多いとは言い切れません。」
基礎代謝を上げることが最も効率が高いことが明らかですね。そして、摂取カロリーを減らすというのはもちろん(食いしん坊なので個人的には気が進みません)、習慣的に運動をすることも大切で、家事などでまめに動くこともカロリー消費に寄与できるのですね。そして、ココ(↓)です。「運動強度が低いと脂肪を使う割合が増える。」有酸素系運動のほうが、エネルギー消費が高いイメージがありますが、ゆっくり動くヨガやピラティスも希望が持てます。
「身体活動中にエネルギー源として使われる糖と脂肪の割合は強度によって変化し、強度が低いと脂肪を使う割合が増え、強度が高いと糖を使う割合が増えます。ただし活動後も身体を回復させるために代謝亢進は続いています。その際に高い強度で身体活動を行った後は、活動中に使われた糖を肝臓や筋肉に補填するため、より多くの脂肪が使われています。身体活動によってどのくらい脂肪を燃焼したかは、活動中だけでなくその後の回復時にどのくらい使われたのかもあわせて考える必要があります。」(※2)
そして、もう1つ。ストレスへの対処法です。先の『脳を鍛えるには運動しかない!』にはこのような記述があります。
「ストレスにどう対処するかによって、気持ちが変わるだけでなく、脳がどう変化するかも違ってくる。大半の精神医学的問題と同じく、慢性のストレスを感じると、脳は同じパターンにはまり込む。その典型例が、悲観、恐怖、引きこもりなどだ。しかし、能動的に対処すれば、その状態から脱出できる。本能的な反応を別にすれば、ストレスの作用はある程度コントロールできるものなのだ。(中略)コントロールこそが鍵となる。」(※3)
そして、まさにこの本のタイトルならではですが、運動が身体的にストレス反応を誘発するものの、心拍数を上げることで心と体のストレス反応を緩和するとも伝えています。
「運動は自発的にすることなので、そのストレスは予測できるし、コントロールできる。その点が心理上、重要な意味を持っている。自分を支配しているという感覚と自信が得られるからだ。」
コントロールできるという感覚、自分でできることがあると思えること、それ自体がストレスに立ち向かうための強力な力になるのですね。ストレスを感じているとき、あるいは日々の習慣に、自発的に楽しめること、没頭できることに時間を費やしてみてはいかがでしょうか。
※1・※3 『脳を鍛えるには運動しかない!』 ジョンJ.レイティ (著), エリック・ヘイガーマン (著), 野中 香方子 (翻訳)/NHK出版
※2 「身体活動とエネルギー代謝」 大河原 一憲 電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報学専攻 准教授/e-ヘルスネット 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト
文・七戸 綾子