読者の方々から届いたインストラクターへの質問のなかから、特に多かったものをご紹介。あなたの「?」を「!」に変えます。

Question
マタニティクラスに参加したいけれど、つわりがきついし、長引いています。気分も落ち込み気味です。こういうとき、少しでも改善できる方法があれば知りたいです。

Answer
妊婦さんにとって、出産の痛みとは別につらいと言われているのが、つわり。吐き気やめまい、疲労感、眠気、さらには食べ続けないと気持ち悪くなってしまう食べづわりなど、さまざまな症状があります。

妊娠初期(~16週目)の方々の中では、病院で治療するまでいかない程度のつわりを感じる人は、全体の約80%がいるとか。個人差はあれど、多くの方がつわりや気分の落ち込みを感じるようです。これは身体にどういうことが起こっているのでしょう?

ヨガインストラクターであり、マタニティや産後ヨガのクラスも多く担当しているリカ先生に聞いてみました。

ヨガ リカ先生

──リカ先生、女性の身体に新たな命が宿る、ということは、いったい身体にはどういった変化が起こっているのでしょうか?

「命の最初の大きさである受精卵は0.1㎜ほど。それが出産時までに50cmにまで成長します。これは約5000倍の成長。そして重さは0.000003gが約3,000gまで約10億倍に成長するのです。その赤ちゃんの成長を受けいれる子宮は、長さ7cmが35cmに(5倍!)、重さ50gが1,000g(20倍!)、容量5mlが4,000ml(800倍!!)へ変化するのです。赤ちゃんを受け入れ育てるためのママの体作りに、ホルモンの分泌もまた急激に変化するのです。

つわりは50%~80%の人が経験するといわれています。ホルモン分泌の急激な変化、自律神経の乱れ、赤ちゃんとの免疫の相性、体質、などが原因ではと言われていますが、まだ解明されていません。

ただ一つ言えるのは、タツノオトシゴのような姿をした初期の赤ちゃんが、心臓、目、口、鼻、手、足、などを発達させてヒトの姿になり、脳神経、内臓など様々な器官を形成していく重要な時期であるということです。

赤ちゃんの器官形成期が終わり、胎盤が完成して赤ちゃんへ安定して栄養を供給できるようになる、いわゆる安定期に入ると、一般的にはつわりが収まり、ふっと軽く楽に感じるときがやってきます(稀に出産までつわりが続く人がいます)。それまでは、赤ちゃんに心を添わせて、呼吸を整えて乗り切りましょう。」

──では、そのつわりをヨガで少しでも楽にする方法はありますか?

つわりの代表的な症状である吐き気や不快感があると、喉元を緊張させ肩を丸めて胸を小さくしがちです。仰向け系で胸を開いて呼吸を深めることをおすすめします。

どちらも、ほどよく肩甲骨を中心へ寄せて背伸ばし、胸を開いて、肩を下ろします。みぞおちを重く沈み込ませずに軽さを保ってください。快適さとともにリラックスしましょう。胸の中心に吸う息を満たし、そしてゆったりと深く吐き出す自然の呼吸を大事にしてください。呼吸を深めて自律神経を整えましょう。」

※ 食べ物や飲み物を口にできない、嘔吐がひどい、体重が急激に減少した、尿量(トイレの回数)が減った、などの場合は、医療機関に相談しましょう。

──吐き気などのつわりのほかにも、妊娠期に起きるマタニティ・ブルー、いわゆる気分の浮き沈みも起こりますよね。

「これも急激に変化する女性ホルモンの影響があり、出産や子育ての不安やプレッシャー、人間関係などのストレスも影響するといわれています。些細なことで泣きたくなったり落ち込んだり、イライラしたり、涙もろくなったり。別の見方をすると、女性らしく細やかで情緒豊かな感受性の高いときだと捉えることもできます。」

──この落ち込んだ気分をサーっと晴れやかにする方法ってありますか?

「やはり体を適度に動かすのがいいと思います。ヨガであれば、立位のポーズで足腰を強化すると、全身の血行もよくなりますし、精神的にも強く感じられ、母としての自信につながります。

実は、マタニティ・ブルーは産前だけでなく産後にも起こりえます。大きく女性ホルモンのバランスが変動するとき、情緒不安定になりやすいというのを知っていれば、それだけで納得できたりしますので、わかっていることが大事です。」

──お腹に命が宿っているのですものね、身体にとってものすごい変化ですよね。

「産前も産後も、まわりに話を聞いてもらう、頼る、助けてもらう、お願いする、というのは必要です。デキる女子は、人を助けるのはOKだけど、助けてもらうのが苦手な人が意外と多いものです。ですが、一人で子育てはできません。まわりを上手に巻き込んで、助けてもらう環境を整えてください。

出産・子育ては未知のことですから、不安があるのは当たり前のことです。不安があるからこそ、サポートを用意しておくといいでしょう。私の場合も、夫は泊まりの仕事が多いですし、家族も親戚も近くにはおらず、妊娠中から地元のファミリーサポート制度(子育てなど援助を受けたい人、行いたい人の地域会員組織)の登録をしました。それだけでも安心しましたね! 産後は何人ものファミリーサポートさんにお世話になりました。今では近所に親戚のおばちゃんが何人もいるような、頼れる存在です。

妊娠中や出産で大きな負担がかかるのが、骨盤底筋群です。ここは、ヨガではムーラダーラ・チャクラがある場所で、「根っこ」「支え」といった意味があります。また、生命の根源的なエネルギーが眠っているともいわれる場所です。大きくなる子宮や、様々な内臓を下からサポートしている根っこの部分がダメージを受けるわけですから、「サポートされていない感」が強まるのは自然のことだと思えます。このような時期だからこそ、積極的にサポートしてもらいましょう。自分から手を伸ばせばサポートがたくさんあることに気づくことも大事です。

そして、安定期に入って医師の許可があればクラスに参加できますので、ぜひリフレッシュしにスタジオにきてください。」

編集 竹内まり子