春は変化の季節です。入学、卒業、転職、転勤と、変化はいろいろな形でやってきます。もちろん不安はつきものですが、入学や、転職のように意図して自ら環境を変えた時は、気持ちは前向きなものです。

ところが、意図しない転勤、部署異動などの組織変更、子供の進学による巣立ち、あるいは、自分に直接変化がなくとも、信頼していた人が近くから離れていく、周りの環境が変わる、そんな変化に見舞われたとき、不安や心細い気持ちになります。そして、そんな変化が多いのが春です。

例えば、大切な人が遠くに行くとき。当事者にとっては喜びとなることも、見送る側としては変化に対する不安に包まれたまま、「喜ばなければいけない」と思ってしまう。春に訪れる不安や悲しみは、「喜ばなければいけない」という一般概念が頭の片隅にあるから余計に厄介です。

また、まわりが変化していくなかで、変わらない日常が「このままでいいのだろうか?」と不安になることもあります。

いつもの日常が、当たり前ではなくなる不安。身近な人がいなくなるという喪失感。あるいは、ただただ、不安で、足元が揺らぐような感覚。そんなまわりの変化から訪れる、不安について考えてみましょう。

私の信じる(認識している)世界が変わる

不安は、人間だけができる高度な脳の働きです。未来を予想し、臨場的にその場を想像します。頭の中で舞台が行われ、悲劇的な自分(主人公)を見るのです。

そして、私たちには「世界はこういうものだ」と定義づけをしている脳の働きがあります。まわりの人や環境を認識しているということでもあります。ですが、この定義付けを変えざる負えない出来事、またそれを受け入れなければいけない時に、悲しみは起こります。

私の信じる世界の拠り所

私たちは自分の信じる世界の拠り所が外側にあります。だから世界が変化した時に心がざわめきます。

あるヨガの先生がいいました。
「私はビールが好きです。でもビールがなくても楽しいです。」

私たちはたくさんのことを所有しています。でももっと内側にある深い愛や喜びは
邪魔されることもなく、また減ることもありません。環境が変わったとしても「あなた」であることは変わらないのです。

感情が揺らぐことは、その相手に愛情があったり、大事だと思っているから起こります。とても自然で尊い感情です。

でも不安である時に、その頭の中でグルグルとまわる想像の世界から抜け出せないこともあるでしょう。

ぐるぐると回る不安を解消し、少しでも心を軽くする方法をご紹介します。

不安や悲しみがある時に、揺らぐ心を軽くする3つの方法

1.呼吸がリズミカルになる運動をしましょう

感情が揺れ動く時、呼吸が浅くなる傾向があります。リズミカルな運動は、呼吸を一定にして呼吸を整えます。一定のリズムで動くことで、ある意味、強制的に呼吸が促され、物事を総合的に見たりその中から意思決断をする脳の前頭前野の働きが活性化することがわかっています。

また、前頭前野が活性化すると、情動は制御され客観的に物事を見ることができます。少し速足で歩くこと、またヨガもおすすめです。

2.深い呼吸をする

ヨガの呼吸法を知っていれば、大いに役立ちます。が、深呼吸でも十分です。深呼吸も上記と同じように前頭前野を活性化させます。気持ちが前向きに変わります。
あまりに落ち込んでいたり、多くの不安がある時には、深呼吸をする気分にさえならないでしょう。そういう時は、声を出します。

息を吸って「あーーーーーーーーーーー」できるだけ長く声を出します。
これを数回繰り返すとよいでしょう。

歌を歌うのも効果的です。声を出すことで、自然に呼吸が深まっていることがわかるはずです。

3.感情の奥にある「変わらないもの」に意識を向ける

悲しみや不安が起きる時その奥には、相手への愛情であったり、思いやりがあります。

小石の中にキラキラとした石を見つけるように、深呼吸をした落ち着いた心で、その愛のようにあたたかい気持ちにフォーカスしてみましょう。

意図しない転勤や部署の移動であれば、どれだけ自分がその仕事が好きだったか、仲間への思いを紙に書きだしてもよいです。変化していくものの中に変わらないつながりを見つけることができるはずです。

喜びも悲しみも、不安も素晴らしい感情です。1年たった時に、この春のころを思い出すと、美しい写真を見る時のように、優しい目で思い出せるのではないでしょうか?

大事な思いで、優しい気持ちと共に、新緑の春を見渡せるとよいですね。

***

1日のはじまりに、聴くだけかんたん瞑想、オーディブル「心を軽やかにする朝の瞑想」はいかがでしょう?

文 ヨガインストラクター ケイコ/編集 七戸 綾子