想いを持って、働くということ vol.1
FAR EAST
ドライフルーツの量り売り、届けたいのはストーリーです。
伝えることに本気で取り組む姿勢。
商品を人に伝える方法はひとつではない。場所や時間、パフォーマンスなど趣向を凝らすことが、ものの奥行きを形作っていく。『FAR EAST』の店内を見渡せば、エジプトの職人さんに作ってもらった真鍮造りの看板にランプ、中近東を連想する赤紫に塗られた壁、ガラスジャーから取り出す様が美しい量り売りのパフォーマンスに、踊り子のような衣装を身に纏ったスタッフの可憐な動き。佐々木さん夫婦が体験してきたさまざまなノウハウが、実にたくさんの仕掛けとなって取り入れられているのが見えてくる。もちろん、お客さまに寄り添う接客もひとつの特徴になっている。「ご縁を配るつもりで試食を配るように伝えています。それには、気が利かないとできません。急いでいる方には上手く間合いをとって話しかける。自分の話が今、どんな風に求められているのか、空気を読むのです。本当に辛い人には、たったひとさじの試食が優しく差し出されるのも、温かさに感じられるものです。いつも相手に喜ばれて『ありがとう』と言われる仕事をすることが、この先のご縁を繋いでいくんだと考えています」。
役割を果たすことで見えてくる。なくてはならない存在になること。
見渡せば美味しいバナナがあり、一方で貧困に喘ぐ子どもたちが溢れている。双方を繋ぐアイディアが沸いてきた。現在、子どもたちが自分で働いたお金で学校に行けるような仕組み作りが始まっている。
人の生活になくてはならないものを扱いたい。そんな想いからスタートした佐々木さん夫婦の旅は、異国の生活文化という目に見えないけれど確かにそこにあるものを届ける旅へと変化し、今また新たな課題に向かい始めたばかりだ。
写真 望月 小夜加/現地写真 FAR EAST/企画・文 stillwater