意思を持ってゆるやかに流れに沿う
Say “I will”, not “I want”
POPUPSHOPはスーツケースや風呂敷のようなイメージで、気楽にしていられるような範囲内でやっていこうと心がけています。日本では年二回ほど開催しています。今年は京都の一保堂茶舗さんの二階のイベントスペースでの開催を予定しています。トークイベントにもおかげさまでよく声をかけていただいています。例えば、お友だち達でもあるカフェ・ディマンシュの堀内さんがこの前ニューヨークに弾丸7時間滞在の旅行に来た時に、コーヒーショップだけに行きたい、と要望があったので、一緒に回ったんです。それをテーマにしたら大好評で、嬉しかったですね。
あとは、ブルックリンや西海岸など、私が訪ねたお宅の写真などを元に、インテリアレクチャー的なトークイベントも企画しています。
インテリアコーディネートやショップディレクション、キュレーションも行っており、例えば山形の「湯どの庵」という温泉宿は、日本で暮らしていた頃からのクライアントです。12年続いています。
模索した20代、走り抜けた30代
その時、自由が丘の雑貨店『私の部屋リビング』に、「帰国の際に店のアクセントになる雑貨を買い付けてきてくれませんか」と声をかけていただい頂いて。
「あ、面白そう、やってみたい」と引受け、せっかくなので輸入雑貨卸の社名を考えました。それがサザンアクセンツ(=南部なまり)という名前。
こうやって振り返ってみると、転機となるときには何かしら「これやってみる?」という挑戦状みたいなものが自分の前に現れる、という気がしています。一見チャンスでもあるその挑戦状にはだいたい難問なことがくっついていて、それを乗り越えて、ひとつずつ自分のキャリアが増えていった……自分のものにしてきたと思っています。
タクシーの運転手の言葉にハッとする
ニューヨークは以前から大好きで、毎年通ってきていたんですが、移住の直接のきっかけとなったのは、たまたま乗り合わせたタクシーの運転手さんとの会話だったんです。
2007年の暮れをニューヨークで過ごしていた時のことです。お友だち達のパーティからの帰り道、運転手さんに
「日本から来たの?」
「はいそうです」
「ニューヨーク好き?」
「いつかここに住んでみたい(I want to live here someday)」って言ったんですね。
そしたら運転手さんが
「“I want”って言ってるうちは夢はかなわないよ。“I will”って言わないとダメなんだよ」と。
自分でもはっとしたんですね。
それがきっかけで、前からお世話になっている編集部に滞在ビザの相談をしてみたら「うちがスポンサーになりますよ」と言ってくださって、ビザを申請してみたらすぐとれたんです。すべて潮時というか、見えない力というものがあったんでしょうね。
この5年間は準備期間で、これからが本番、と思っています。ただし、無理はしない。60歳を前に、50代の今は、更に「シンプルな暮らし」を意識しています。それは、持ち物も、暮らしも。体力も若い頃のようにはいかないので、必須とも言えますが(笑)、気持ちは若い頃より、もっと自由な気がしています。
写真 Miho Aikawa / 文 山祥 ショウコ