――シニア向けにヨガを教えているそうですね?
チエ 府中市のデイケアセンターで介護予防ヨガをやっています。介護を受けるようにならないように予防しましょう、という目的ですね。最初は3回コースで招かれて講師費をいただいていました。それが終わったあとに参加者の方から、ぜひ続けて欲しいと言われて、今度はボランティアでやらせてもらうことにしました。65歳以上、80歳後半まで、だいたい、70代、80代前半がメインですね。最初月1回だったんですが、もっとやってください、と言われたので、月2回にしました。1回90分やります。

楽しいですよ。シニアの方が対象なので、ウォームアップに十分に時間をかけ、お休みを多くとるようにしています。ヨガを初めてなさるという方がほとんどなので、無理をせず、楽しく動くように心がけています。立ったり、座ったり、仰向けになったり、うつ伏せになったりと、リズムよく、全身をバランスよく動かしています。

――プログラムの内容はチエさんが考えるんですか?
チエ そうなんです。プログラムに通われている方はお元気ですね。毎日歌、とか1週間びっしり予定があるの。介護予防ヨガでは、笑いヨガも取り入れています。私、笑いヨガリーダー認定を受けたんです。スタジオ・ヨギーでも、ノリコ先生がやってらっしゃいます。一回ひそかにヨギーのクラスでも入れたことがあります。そしたら、笑い声が響いてたんでしょうね。クラスが終わったら、何やってたんですか?と、受付のスタッフにふしぎそうに言われました。そのクラスは、皆さんとても一生懸命にやってくだっさったので、最後に表情を和らげたいなと、思ったんですよね。

いろんなことばに勇気をもらって

――チエさんの好きなことばはありますか?
チエ これは聖書の言葉ですが、「常に喜べ、絶えず祈れ、すべてのことに感謝せよ」が、中学生ぐらいのときから好きでした。そんなに深く宗教的には考えていなくて。あとは「never give up」も大好き。ほかにもそのときそのとき感動して、いろんなことばに勇気はもらいます。いま好きなことばは「すべて変わりゆく」。なるほどなーっと思う。今自分が思っていることも、どんどん変わっていく。二度と同じものはない。今見ている景色も、浴びている日の光も、顔に感じる風も、人の表情も、二度と同じものはない。高校生の頃、平家物語で、無常という言葉に接しても、理解できなかったけれど、今は深くしみいります。瞑想ですね。

――どんなことにインスピレーションを得ますか?
チエ 昔読んだ本を今読むと、また全然違ったなるほど、と思うことが多いです。ヨガを知ってから読んだのと、知らないで読んだのでは、作者によっては、感じ方が変わると思います。辻 邦生が好きですね。『西行花伝』をヨガをやる前に読んでいたときは、ああ難しいなと思ったけれど、最近読むと、すごくヨガ的というか、インド哲学というか、普遍性があって、ああなるほど、と思いました。死生観にも共感します。今でも難しいけれど、言っていることが以前よりしみる感じがしておもしろいですね。

ヨガの本を読むことが多くなっているので、同時にヨガとは違う文学や、音楽、絵画、いろんなものに目を向けたほうが幅が広がると思っています。
最近みた映画では、サルガドの生涯を描いた、『セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター』、すごい感動しました!写真でこれだけ訴える力があるのかと思って。最後、地元ブラジルの農園(プランテーション)の再生にも感動しました。すごいですよね。一瞬ね、彼がこれだけの写真を撮ってどうしてもっと政治的に活動しないのかなと思ったんだけれど、でもしないからこそ、訴えるものもあるのかなと。最近あれほど感動したことはないですね。

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写真・文 Art of living magazine 編集部