「見島は、とにかく、なんにもない島ですよ」
衣装制作をしている友人から、出身地の島の話をきき、思い立って訪れたのが、2000年の夏。島をぐるりと一周してみると、第一印象に感じた「丁寧に暮らしている」という風景がそこかしこにちりばめられていて、背伸びしていないそのままの島に惹かれて行きました。そんな話を毎月お届けしたいと思います。

日本三大正観音のひとつが、見島にある、と聞きました。
日本人は「日本三大○○」という言葉が好きですね。
日本中、必ず存在する「日本三大○○」

なんとこの小さな見島にもそれはあります。
見島には二つの集落があるのですが、その一つの宇津地区にある宇津観音。
そこがどうやら日本三大正観音と言われるものの三つの中の一つと言われています。

宇津観音は崖のような場所にありまして、そこのすぐ横にある小さな湾の様な場所に、弘法大師が厄よけの為、中国から流した観音様が流れ着いたという謂れがあります。その観音様が宇津観音のご本尊です。

「ちなみに後の二つはどこなんでしょうね?」
島の人で熱心に宇津観音様を信仰して、毎日お参りにきている方にお堂の前で、私は思わず聞いてみました。

「それは分からんけれど、何しろご利益のある観音様なんです!」

他の二つは分からないのに「日本三大正観音」!!

でも、そこを深く追求出来ないところが「日本」っぽくて、何やら不思議な気分になりました。

「日本三大正観音」の話は、見島のことを調べている郷土史家の方に初め聞いたのですが、その時も「それがわからんのじゃよ」と言われて、笑って終わりだったのですが、お参りしている人は、笑っていませんでした。

真剣に知らないけれど、確認なしで信仰には問題なしなのですね。

写真&文 野頭 尚子