同志に出合ったよ、と送られてきた一枚。写っているのは、真っ白な雪原の日だまりで、ほっこりと和んでいるヤマドリの姿だった。

 北の森の3月。芽吹きが訪れるのはまだまだ先のことだけど、雪に包まれた景色のなかにも、わずかに土の香りを含んだ水の匂いに、沢水の流れる音に、春の兆しを感じられるてくる、移ろいの時季。雪質もかわり、北東北の太平洋側で、山を背にして海から吹く「ヤマセ」と呼ばれる東風が、春先になると湿った重い雪を降らせてくるという。そんなヤマセ雪が降った翌日、彼はこの“春待ち”同志、ヤマドリと遭遇したのだそう。
 
――あったかい光に誘われて、沢筋の森あたりを散歩していたときだった。濡れた重い雪に足をとられながら、ボクが歩いていると、ふとヤマドリが目に飛び込んできた。
 ボクと同じように彼も、重い雪をラッセルしながら歩いていて、その姿がなかなかに凛々しい。心地よくいられる場がみつかると、光のなかでじっと佇む。ふくらませた羽毛のあいだにお日さまのぬくもりを蓄えこもうとしているようで、ああ、その気分なんだかとってもわかるよ、と声をかけてあげたくなった。
 冬じゅう雪にまみれ耐えてきたボクらにとって、太陽の光はなによりの恵み。ぞんぶんにカラダで受け止めていると、縮こまっていた筋肉がほどけはじめ、心もゆるんでくる。
 同じ陽射しに包まれながら、ボクがシャッターをきろうとごそごそ動くと、彼は首をこちらに向けて目が合うけれど、それ以上ボクを気にするふうでもなく、静かに羽をふくらましている。 
 じつにのんびりしているように見える彼の姿。ホントのところは、ボクにはわからないいろんな事情を抱えているんだろうけれど。昨日だって、きっと降り積もる雪のなかで、身を隠して夜をやり過ごしたんだろうし、昼は昼でそうそう簡単にめぐり会えない食料を根気よく探さなきゃならないんだろうし。ボクが思う以上に、きっときびしいところで生きているんだろう。
 それでも、ファインダー超しの彼に、ほんのり感じる。春を待つ“気分”をともにできる同志がいることが、やっぱりうれしくてならない――

 
 森から街へ。春待ち気分にチャンネルを合わせてみる。景色のなかに、ずいぶんたくさんの同志が見えてきた。

写真 細川 剛  / 文 おおいしれいこ